2017年6月18日のロッテ戦と言えば「命取られる弾」である。前の打者が敬遠される度に凡退を繰り返した亀井さん。3度目の正直で放ったサヨナラ本塁打に東京ドームが泣いた。
「本当に心が折れていたんで…最後だめだったら命を取られると。そのくらいの気持ちでいきました」
屈辱からの起死回生は野球に限らずスポーツの、いや人生の王道ドラマ。あの時の菅野だって「命取られる投球」だった。
2019年。リーグ制覇を果たすも、エースは腰痛に苦しみ不本意な結果に終わった。「今年は何一つ貢献できていない」と、晴れの優勝会見で涙した姿は忘れられない。
翌シーズンは投手生命を懸ける覚悟でマウンドに立ち続けたはずだ。V字回復はご存じの通り。開幕投手からの13連勝を達成。MVPにも輝いた。
そんなわけで「命取られる弾」の感激を再び。やったぜ中田…といきたいところだけど、あえて「まだまだ」と言いたい。
2軍落ちに、プロ初の送りバント。さらには亀井さんばりに前の打者が敬遠されたりと、伏線は売るほどあった。でも、この人には予感がする。もっとシビレるところで、もっと涙の出るような一発を打ってくれる―。翔タイム的「命取られる弾」。お楽しみはこれからだ。
それじゃあ、今のチームで最も「命取られる」思いをしているのは誰? 我らがクセ者、元木コーチではないでしょうか。もう今季何度目かも分からない鬼門の本塁突入です。
5回1死一、二塁。二ゴロ併殺崩れで二走の増田大を一気にホームへ向かわせたが、あえなく憤死。貴重な得点機を潰す格好になった。
潰すのはラーメン店だけに…なんて独り言でも言っちゃいけない。ツイッターを買収したら、そんなことつぶやくヤツのアカウントは即停止に…という話もどうでもいい。
前にも書いたけど、ギリギリのプレーこそ野球の醍醐(だいご)味。リスクを取って腕をグルグル回すのが三塁コーチャーのお仕事だ。ナインのみなさん、ここは一つ「セーフにならないと元木さんのコーチ生命が絶たれる」くらいの気迫で本塁へ。