◆Yogibo WEリーグ第21節 INAC神戸0―1三菱重工浦和(14日・国立競技場)
すでにWEリーグ初代女王を決めたINAC神戸は、ホーム戦としてリーグ初の国立競技場で試合を行った。三菱重工浦和に0―1で敗れたものの、今季リーグ最多の1万1763人が訪れた。安本卓史社長は、「多くのお子さんの姿が分かったのは、WEリーグの目指しているところ。発展という意味ではお子さんを入れたかったので、成功」と振り返った。
「一年目に勝負に出ないと」と安本社長。初代女王だけでなく、歴史に残る初年度の開催にこだわった。国立競技場での開催は、試合前日と当日の2日間で「施設利用料、警備費、広告設置費、テレビ生中継の放送料などがかかる。若干、黒字で終えた」。十数年間、営業マンだった社長が自らスポンサーを回り、3月下旬から営業を始めて20社・3200万円を10日間で集め切ったという。その中には、以前から交流があった方との縁もあった。「僕の公私ともに人生を懸けているし、その中で選手たちが躍動して欲しい」と、成功へ強い覚悟があった。
国立競技場での開催は、WEリーグの認知度を高める狙いもあった。昨年9月に女子サッカー初のプロリーグとして開幕したが、リーグ全体の1試合の平均観客数は1500人弱で、目標とする5000人にはほど遠い。INAC神戸も前節までのホームゲームの平均は約2100人と、ここまで集客には苦戦を強いられた。「INACのためだけじゃないんです。『INAC、すごい』と言われてもそんなにうれしくない」。この日、目標とした2万人には到達しなかったが、「満足はしている。目標に届かなかったのは、来年の課題として取り組んでいきたい」と、一定の手応えを得た。
今季、INAC神戸は初代女王になり、国立競技場でリーグ戦開催という歴史も作った。「ここで満足しては終わり。今年はだいぶ背伸びしている。次のシーズンは中身をもっと整えること」と安本社長。来季は、スタジアム入場時は無料で、試合後に観客自身で支払う金額を決める制度の導入などのアイデアも明かし、「選手がお客さんを呼べるようにならないと」と見据える。国立開催という挑戦を、今後のINAC神戸、そしてWEリーグの発展にもつなげていく。