新型コロナ陽性者判明で「全競技辞退」のデフリンピック…出場継続の署名活動と今後への思いとは

スポーツ報知
デフアスリートと笑顔の布施みどりさん(後列右から2人目)。前列左から、男子ハンマー投げの森本真敏、男子短距離の山田真樹、男子400メートル障害の高田裕士、女子パラ陸上の高田千明、後列左から布施さんの長女・愛満さん、1人おいて、布施さんの夫・勝仁さん(提供写真)

 ブラジル南部のカシアスドスルで行われている聴覚障害者の国際大会「デフリンピック」で、日本選手団から複数の新型コロナ陽性者が出たため、11日以降の全競技で出場を辞退することが決定。陸上、バレーボールなど、陽性者が出ていない競技もあったことから、“連帯”での一律辞退は波紋を広げた。12日には出場継続を求めたオンラインでの署名活動が行われ、男子マラソンの川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)らが自身のSNSで賛意を示すなど、動きが広がった。署名活動開始に携わった布施みどりさんが14日、スポーツ報知の取材に応じ、署名活動の思いと聴覚障害者スポーツの今後の発展への願いを明かした。

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 都内でケアサロン「ぐり~んりぷる」を経営する布施さんは、五輪、パラアスリートに加え、日頃から陸上を中心とした聴覚障害のアスリートも支えてきた。全競技での辞退決定を知り「何とかならないものか。結論を変えることができないか」と、長女・愛満さんと発起し、署名活動を開始。スタートから22時間で、約2000人に達した。決定は覆らず、出場はかなわなかったが「短時間で、これだけ賛同してくれる方がいて、感謝しています」と語った。

 21年東京五輪&パラリンピック。自国開催の大舞台は、障害者スポーツのパラリンピックにも光を当て、知名度を高める契機になった。ただ、聴覚障害者スポーツの「デフリンピック」は―。史上最多30個のメダルラッシュに沸きながらも、国内での知名度は高いとはいえない。今大会では、花形の陸上男子100メートルで佐々木琢磨(仙台大職)が金メダルを獲得。山田真樹(渕上ファインズ)は、陸上男子200メートルと、400メートルリレーで2連覇が期待されていた。布施さんは「選手たちが、コロナ対策をしながら練習を頑張っている様子を間近で見てきたので、大舞台のスタートラインに立って挑戦する姿を応援したかった」と残念がった。

 デフリンピックは、聴覚障害に対応するため、陸上の号砲を信号で行ったり、サッカーでは審判が笛だけでなく旗で合図を行うなど、五輪やパラリンピックとは異なる点もある。ただ、競技ルールの中で腕を磨き、オリパラの選手と同じように世界へと挑む日本人がいる。自分の体一つで海外勢と渡り合うことに、何も差はない。

 今回の辞退を巡り、ネット上では「デフリンピックを知らなかった」「メダルラッシュに驚いた」という声も多かった。選手の多くは渡航費用の一部として約50万円の自己負担があり、今回金メダリストの佐々木もクラウドファンディングを行って遠征費の工面に尽力した。遠征費用が払えなかったり、仕事の都合がつかずに参加を諦めるケースもある。

 「デフリンピック」の存在が、コロナ禍をきっかけに図らずも一般に知られたことを契機に、競技環境が少しでも改善することにつながるだろうか。布施さんは「選手たちは、既に前向きに切り替えているので、話題が広がって応援してくれる人がもっと増えてくれたら。環境が整って、頑張る選手が競技に集中できるようになって欲しい」と願った。

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