タレント・原田伸郎(70)が、古希を迎えた令和に再び注目を集めている。清水国明(71)とのデュオ「あのねのね」が1979年に発表した「ネコ、ニャンニャンニャン」を、ショート動画投稿アプリ「TikTok」で若者ユーザーが真似してバズって、大人気に。来年、芸歴50周年を迎える“のぶりん”は「本当に驚きましたが、僕のことを知らない世代が遊んでくれて、うれしい。時間がかかったけど『天職』と気付かせてくれたのかも」と柔和な笑顔を見せる(取材・構成=筒井政也)
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■「ネコニャン」ブームに逆乗っかり
本人も「不思議」という突然ブームのきっかけは2022年2月22日、「ニャー(2)」が続いた「スーパー猫の日」。10代を中心にしたユーザーが「合言葉は ネコニャンニャンニャン」の歌詞と手招きポーズに合わせて踊る動画が続出。3月23日にワーナーミュージック・ジャパンから配信リリースも始まった。
キャッチーなフレーズとシンプルさがウケたとみられるが「周りから流行っていると聞いて『へえ~。で、TikTokって? バズるって何やねん?』。40年以上前の曲ですから。デビュー曲『赤とんぼの唄』が大ヒットとしたら、僕の中では中ヒットみたいな曲でしたが、僕のことを、あのねのねを知らない世代が食いついてくれた。若い人の琴線に触れるものがあったのかな(笑い)」。それでも、「今の人って長い曲が嫌なんですよね。だからTikTokのように、20、30秒でオチがあるのがいい。今の人が聴けるテンポ。お母さんが息子に『なんでそんな曲、知ってんの!?』『今、これはやってんねんで』ってね。お母さん、おばあちゃんに教えたり。それが面白いですね」
ラジオ番組スタッフの勧めで「本家動画」も上げ、今は「一日一曲TikTok」にも挑戦中だ。「『さんぽの唄』は『ポッポッポ』。短ければ短いほどいいんです」。2020年からは宝塚医療大の特別客員教授としてコミュニケーションを教えている。「『ネコニャン』で、大学側は喜んでくれている。講義を90分、集中させるのは難しい。今年は3年目。学生の心をガッチリつかんでやろうかな」と、“バズり体験”で得たヒントを教壇でも生かすつもりだ。
大切にする「人がやらないこと」「遊び心」の原点は京産大の落語研究会。小噺(こばなし)を歌に変えた。「ネコニャン」の「カエルもアヒルもガーガーガー」のフレーズも「息を吸いながらしゃべるギャグをやろうと思っていたんです。先輩に『何やそれ、おもんないわ』と言われてカチンと来て、絶対にこれで人を笑わせたいと思っていた。それが後に『ヤングタウン』(MBSラジオ)で仕事になって、曲になって…。ざまあみろ!(笑い)でもこの『ガーガーガー』をまねるのが難しい。講座、開こうかな」。
■落研→歌のバイト→あれよあれよ
だが、「ネコニャン」は誕生しない可能性もあった。大学時代、落研の同級生・笑福亭鶴瓶(70)を通じて出会った1年先輩・清水に誘われ、京都・河原町のビアガーデンで歌のステージのアルバイトを始めると、「おもろい2人組がおる」と評判を呼んで、73年に歌手デビュー。曲は大ヒットしてニッポン放送・オールナイトニッポンのレギュラーもつかんだ。「何の苦労もせずに、本当に流れに乗っているだけ。僕の中では、2、3年で、やることは全部やった、みたいな」。75年の蔵前国技館コンサートを最後にするつもりで、42単位残して休学していた大学に復帰。芸能界を辞めるつもりだった。
周囲は「せっかくつかんだものを何で手放すねん」と反対したが「その意味も分からないぐらい素人だった」。叔父から「のぶちゃん、継いでくれへんか」とお願いされた生活用品店の跡継ぎになることも考えていた。
「学校の就職課も覗いたんです」。その時見た求人の張り紙が原田の未来を大きく変えた。(中編に続く)
◆原田 伸郎(はらだ・のぶろう)1951年10月1日、京都市生まれ。70歳。京産大学在学中に清水国明と「あのねのね」を結成し、73年に歌手デビュー。77~86年に2人でテレビ東京系「ヤンヤン歌うスタジオ」で司会を務める。書・墨遊家(ぼくゆうか)としても活動。サンテレビ「原田伸郎のめざせパーゴルフ3」(火曜・後11時)、ラジオ関西「原田伸郎 のびのび金ようび」(金曜・前10時)、MBSエムラジ「のぶりんのあつあつふうふう」(日曜・前7時20分)、eo光テレビ「原田伸郎のこの街ええなぁ」(第1、3水曜・前9時)にレギュラー出演中。
◆あのねのね 1971年頃、京産大の学生で結成。初期は鶴瓶と、後の鶴瓶夫人も在籍した。デビュー曲「赤とんぼの唄」(73年)、「パンツ丸見え体操」(79年)、「みかんの心ぼし」(80年)、「いたぁーいなにすんの」(8181年)などギャグソング以外にも、河島英五さん提供の「青春旅情」(75年)、結婚式場「月華殿」のCMソング「嫁ぐ朝に」(78年)など本格派ナンバーも多数ある。