【番記者の視点】脳震とう疑いで交代のC大阪GK金鎮鉉 ラスト数分間に伝わってきた「使命感」

後半、ゴール前でC大阪GK金鎮鉉が磐田・大津祐樹(上)と交錯し負傷する (カメラ・馬場 秀則)
後半、ゴール前でC大阪GK金鎮鉉が磐田・大津祐樹(上)と交錯し負傷する (カメラ・馬場 秀則)

◆明治安田生命J1リーグ 第12節 C大阪 2―1 磐田(6日・ヨドコウ桜スタジアム)

 C大阪は、今季J2長崎から加入したDF毎熊晟矢のJ1初ゴールを含む2得点で磐田に2―1で勝利。今季ホーム6試合目で初勝利をあげたが、元韓国代表GK金鎮鉉(キム・ジンヒョン)が、試合終了間際に相手選手と接触し負傷交代。2017年から継続していた連続フルタイム出場は181試合で途切れた。

 胸が痛んだ。金鎮鉉に対して、SNSなどで「遅延行為」「時間稼ぎ」といった批判の声が上がっていることにだ。

 C大阪が1点リードで迎えた後半43分、ハイボールをキャッチした守護神は遅れて飛び込んだ相手選手と接触。しばらくピッチに倒れ込み治療を受けた後、ロスタイムに入って一度はプレーを再開したが、すぐに再び痛みを訴え座り込んだ。チームはプレー続行は不可能と判断。すでに交代枠は5枚を使い切っていたが、「脳震とうの疑いによる交代」としてGK清水圭介と交代した。

 記者席からは、しきりに左肩を痛がる様子が目に映った。1点を追う磐田の選手やサポーターからすれば早く試合を再開してほしいだろうし、治療にあたっていた数分間をもどかしく感じていたことも、脳震とうの疑いがあっての交代だと現場にいても分かりづらかったことも理解できる。ただ、故意に時間を稼いでいたとはどうしても思えない。

334試合出場を達成し、家族と記念写真におさまるC大阪GK金鎮鉉 (カメラ・馬場 秀則)
334試合出場を達成し、家族と記念写真におさまるC大阪GK金鎮鉉 (カメラ・馬場 秀則)

 金鎮鉉は3日の鳥栖戦で、外国籍選手としてはJ1歴代最多となる334試合目の出場を達成。自身の記録を335に伸ばしたこの日は、試合前に新記録樹立を祝うセレモニーが実施され家族もスタジアムに駆けつけていた。

 プロ入りからC大阪一筋14年。外国籍選手としては異例のキャリアを歩んできたGKは、今回の記録を打ち立てられた要因にチームの存在をあげた。「自分を信頼して試合に使ってくれているからこそ、自分もそこで結果を出さないといけない」。使命感の強さは練習量にも表れ、「(練習は)誰よりもやった記憶はあります。誰よりも頑張ったし残って筋トレとかもやった」と、自ら胸を張れるほどの努力の結晶が支えになったという。

 試合映像を見返した。痛みに顔をしかめながら、それでもプレーを続けようとしたのはチームからの信頼に応えようとしたからだと思っている。試合後、主将のMF清武弘嗣は自身のSNSで、金鎮鉉がロッカーで頭痛を訴えていたことを記し、クラブ関係者は「(頭を打ったことで)試合の記憶も少し飛んでいるみたいだ」と心配そうに話した。危険な状態でありながら、本人は最後までピッチに立つことを諦めてなかった。

 連続フルタイム出場はストップしたが、正GKの執念はチームに波及。接戦を制し、今季ホーム初勝利を手にした。負傷の影響が少ないことを祈るとともに、偉大な記録を積み上げていく姿を取材できることを改めて光栄に感じた。(種村 亮)

後半、ゴール前でC大阪GK金鎮鉉が磐田・大津祐樹(上)と交錯し負傷する (カメラ・馬場 秀則)
334試合出場を達成し、家族と記念写真におさまるC大阪GK金鎮鉉 (カメラ・馬場 秀則)
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