昭和の悪役レスラー、タイガー・ジェット・シンのホテルに突撃し頭をかまれた伝説のカメラマン

スポーツ報知
タイガー・ジェット・シンに首を絞められる山内猛さん(本人提供)

 プロレスカメラマン歴50年のベテラン、山内猛さん(67)が秘蔵写真を集めた「プロレスラー―至近距離で撮り続けた50年―」(新潮社、税込み1980円)を出版した。今年旗揚げ50周年を迎えた新日本プロレスと全日本プロレスの創設時から、プロレスラーを撮り続けてきた。アントニオ猪木、ジャイアント馬場、ジャンボ鶴田、藤波辰爾、天龍源一郎、長州力、三沢光晴、ミル・マスカラス、アブドーラ・ザ・ブッチャーら山内さんが撮った昭和・平成のプロレス黄金時代の写真が140点掲載されている。

 収録されている最も古い写真はちょうど50年前。1972年5月21日、ミル・マスカラスが日本プロレスに参戦するため羽田空港に降り立った来日シーンだ。17歳の高校生だった山内さんは、羽田空港や宿泊先のホテルまでカメラを手にレスラーを追いかけていたという。

 当時はプロレス専門誌紙が、初来日の外国人レスラーの宿泊先を訪ね、上半身裸のファイティングポーズを特写(資料作成)することが恒例となっていた。「ファンとすれば、その撮影に憧れましたね。自分でも撮ってみたいと」と山内さん。追っかけ仲間には、現在、女子プロレス「スターダム」エグゼクティブプロデューサーのロッシー小川氏もいたという。

 「ホテルのフロントに聞けば、普通にレスラーの部屋番号を教えてくれる時代でした」とマスカラスの部屋を訪ねては、写真撮影ばかりでなく、マスクまでもらったという。「マスコミだと思ってくれたんでしょうね」アントニオ・ロッカ、ブルーノ・サンマルチノからディック・マードックまで部屋に押し掛けたという。究極はタイガー・ジェット・シン。”インドの狂虎”と呼ばれた昭和を代表する悪役だ。

 「プロレスラー―至近距離で撮り続けた50年―」にも掲載されなかった秘蔵ショットを山内さんに見せてもらった。シンにコスチュームを着てもらうことに成功し、サーベルを持ってもらってのポーズ。そして、その後に頭をかまれるという”お手柄お宝”写真だ。

 プロになったのは1980年だが、高校時代からリングサイドでの試合撮影もしている。同世代のカメラマン・原悦生さんも著書「猪木」(辰巳出版 G SPIRITS BOOK、2530円)に書いていたが、山内さんもアマチュア時代にリングサイドに勝手に入って一眼レフで撮影していたという。

 「当時は試合の混乱に紛れてリングサイドでシャッターを切っても、怒られたりつまみ出されたりすることもなかった」

 コロナ禍以降は、山内さんクラスでも、人数制限でリングサイドに入れてもらえないこともあり、後楽園ホールのバルコニーで見かけることも多い。「最も意識しなければならないのは試合の邪魔をしてはいけないということなんです。そしてカメラマンの後ろにはチケットを買ったお客さんがいる。そこを邪魔してもいけない」突撃もするが、引く時は引く。プロレス空間への絶妙な距離感が、50年のキャリアを支えている。(酒井 隆之)

 ◆山内猛(やまうち・たけし) 1955年2月23日、神奈川・鎌倉市生まれ。67歳。大学卒業後、写真専門学校を経て1980年、内外タイムス社入社。編集局写真部記者(カメラマン)としてプロレスをメインに担当。写真部長を経てフリーに。現在は共同通信社配信の「格闘技最前線」の写真を担当し、週刊誌等で取材を続けている。

 

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