スタジアムでの「マスク着用声出し応援」は可能か? マスク声出し制度のマレーシアで感じた現状と課題

スポーツ報知
マスクを着けた状態で応援するマレーシア・JDTのサポーター

 日本スポーツ界は、観客の声出し応援制限緩和に向けて動き出している。従来の応援スタイルへと戻る前段階として、まずはマスク着用を義務とした声出しが解禁されるとみられる。現在、マスク着用での声出し応援スタイルをとるマレーシア・ジョホールバルのサッカークラブ・JDTのゴール裏席に足を運び、現状と課題を探った。

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 4月24日、サッカーACL第4節JDT―川崎の一戦。現地午後10時キックオフという遅い時間ながら、会場には約1万6679人が集まった。JDTはマレーシア随一の人気を誇るクラブで、南米風の応援スタイルは東南アジア屈指の熱量を誇る。

 マレーシア国内の感染症対策、市民の予防意識は、日本と同等か、それ以上に感じられた。街中に、マスクを着けていない人はほとんどいない。感染経路や濃厚接触者特定のため、ショッピングモールや飲食店に入る際は専用のアプリを使ったチェックインが必要だ。旅行者もアプリのダウンロードが必須で、川崎の選手たちも必要に応じてチェックインを行っていた。思っていたよりも、感染症対策は徹底されている。

 試合開始30分ほど前の段階で、ゴール裏席のほとんどの人がマスクをしていた。外してもペナルティはないと聞いていたが、なるほど、みんなルールはしっかり守るんだな…そう思った矢先、応援歌の熱唱が始まると、半分ほどがマスクを外した。ゴール裏席の着用率は、ざっと見渡す限り50%ほどまでに下がった。

 応援歌を熱唱していた30代のタクシー運転手・エイミーさんは、いわゆる「あごマスク」状態だったが、こちらが話しかけるとマスクを着けて取材に対応してくれた。

「運動中にマスクをつけるのは大変じゃないですか。僕たちはジャンプをして歌うので運動をしているんです。マスクは暑くて耐えられないです。マスクを着けたままの応援は、逆に健康によくないんじゃないかな」

 それはルール違反になるのでは…。彼に問うと、苦笑いが返ってきた。

「着けたいけど、暑さで着けられないっていうのが現状です。それが嫌な人は(声出しのない)メインスタンド席を購入しています。感染を恐れて試合に来なくなる? それはありません。感染したくない人はマスクを着けてます。現に、マスクを着けて声を出している人も結構います。文句を言われることもありません。自己責任ですから。だからノープロブレム」

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 この日は夜10時キックオフでありながら、気温29度、湿度90%という環境下だった。これから日本もどんどん暑くなっていく。熱中症のリスクもある中、暑さとの向き合い方は課題となる。日本のスタジアム内において、マレーシアのように「約半数の人がマスクを外してしまう」という状況は、世論が許さない。

 前述のエイミーさんにこちらの取材意図を伝えると、彼は困惑気味の表情を浮かべた。「日本は声を出しちゃダメなの? それは驚きだ。東南アジアは全ての国でOKだよ。欧州もアメリカもOKだし、南米もアフリカも多分OKだし…日本はなぜ?(ゼロコロナ政策の)中国と同じ考え方なの?」

 正直、答えに窮した。

 全員が納得する方策を取ることは難しい。緩和策によって、スタジアムを離れる人が一定数出てくるかもしれない。感染症対策は、いわゆる「まず、やってみる」が通用しない分野だとも思うし、賛否どちらも正論になるから難しい。

 しかし、「スポーツ観戦」という尺度だけで考えれば、現在の日本のスタジアムが世界的に“異端”であることも痛感させられた。プロスポーツは、応援あってのもの。声援があるだけで、スタジアムの雰囲気は一気に熱を帯びる。「早急に」とまでは言えないが、「少しずつでも」本来のスタジアムの姿を取り戻す過程をたどってほしい。(記者コラム 川崎担当・岡島 智哉)

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