「南野がこのメンバーの中にいることがすごい」講談社社長が語る最強リバプールの魅力…英通信員・森昌利コラム

スポーツ報知
講談社の野間省伸社長ⓒ講談社

 世界で認知が進み、現在では海外でも不動の人気を誇る日本の『マンガ』。英国もその例外ではなく、今では一般書店にマンガの単行本がずらっと並ぶ。しかしその一方で『アキラ』『進撃の巨人』という作品名は知れ渡っても、出版元の名前は案外知られていない。

 そんな現状を打開し、海外で『Kの印がつくマンガは面白い』というブランドイメージを拡大するために、リバプールとスポンサー契約を結んだという講談社の野間省伸社長。クロップ監督就任以来、急ピッチで名門復活を果たし、現在ではプレミア、そして欧州でも最強の座を争う強豪に変貌したリバプールに注目し、世界戦略のパートナーとしたのは、東京のサッカー名門校暁星高校在籍当時からサッカーに魅せられ、90年代の英国在住歴を通じてサッカー発祥国の熱狂を知った53歳社長の貴重な体験が隠れていた。今回はスタジアム内に設営された『講談社コーナー』の視察のためにアンフィールドを訪れた野間社長に、4月24日に行われたエバートン戦当日、スタジアム近くのホテルでリバプールの魅力について語ってもらった。

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 「実はアンフィールドに来たのは2回目なんですよ」。野間社長は開口一番「ちょっと面白いことを思い出した」とでもいう微笑を浮かべて、そう語り出した。

 「1995年にリバプールのリーグ最終戦を友人と2人で見に来ているんです。生まれて初めてのプレミア観戦でした。ところが会場を訪れた瞬間、血まみれの男性が担架に乗って運ばれて行くではありませんか。えらいところに来たなと思いましたよ(笑)」

 実はこれ、伝説的な試合だ。1995年5月14日。リバプールがブラックバーンを相手に後半ロスタイムの劇的なゴールで2―1の勝利を飾ったが、優勝争いをしていたマンチェスターUがアウェーでウエストハムと1―1で引き分け、リバプールに負けたブラックバーンが優勝した。

 さらに1996年にイングランドで行われた欧州選手権も観戦しているという。当時のイングランドのサッカーはまだまだ荒っぽく、準決勝でイングランドがドイツにPK戦で負けた直後、ロンドンのトラファルガー広場で暴動が起こった。「これも驚きましたが、試合中から、その裏側の様子までBBCのカメラが暴動を撮影していたんですよ。翌日、そのドキュメンタリーが放映されて、スタジアムに配備された警官達がイングランドの選手がPKを失敗する度に『これはまずい』という表情になっていったのをよく覚えています」と野間社長は懐かしそうに語った。

 そんな生のヨーロッパ・サッカーを体験した野間社長は現在のリバプールの魅力についてこう語る。

 「偶然、私達がスポンサーとなった今季は4冠の可能性を残したシーズンとなっていますが、それにふさわしく、とにかくすごいサッカーをしています。例えばこの前のマンチェスターU戦。4―0というスコアもすごいですが、この4点全てがすごいゴールでした。特に2点目、マネのアシスト。あんな体勢からあんなところにパスを出し、しかもそこにサラーがいる。本当にすごいチームだなとうなりました」

 クロップ監督に究極のカウンター・プレスを叩(たた)き込まれ、凄(すさ)まじいスピードと絶妙のタッチを重ねた上、まるで第六感でチームメイトの位置を察知するような異次元のサッカーを繰り広げるリバプール。今季はまずリーグ杯を制して1冠目を獲得。そしてFA杯は決勝進出。欧州CLも4強入りを果たし、プレミアではマンチェスターCと勝ち点1点差で凄まじい優勝争いを展開している。

 野間社長はそんなリバプールのエキサイティングなサッカーに魅入られているという。現時点でまさしく世界最強を争うチーム。そしてそこには日本代表MF南野拓実がいる。

 「試合前日のホームのロッカールームに特別に入れてもらったんです。ものすごい設備でした。そして前日にもうすでに試合の準備が整えられているんですね。そこに南野選手の場所もありました。きちんとユニフォームがかけられて、日の丸が飾られていました。確かに最近の日本では、南野選手が試合に出られなかったと、そこだけ言われます。しかしこのメンバーの中に日本人がいること。それは本当にすごいことだと、このロッカールームを見て改めて思いました」

 リバプール攻撃陣は現状世界一選手と評されるサラーをはじめ、マネ、フィルミーノ、ジョッタ、そこに今年の1月コロンビア代表FWディアスが加わり、ベルギー代表FWオリギ、そして南野にもなかなか出番が回ってこない。クロップ監督も時折苦渋の表情を見せながら、「体調も万全だが、彼らのせいではなく、他の選手が素晴らしすぎる」と語り、南野をはじめ、実力は折り紙付きながら試合にでられない選手を気遣う。しかしそれも現在世界一を争うチームならではの現実だ。

 そして本拠地は、そんな強いリバプールを支え、イングランドの中でも最も熱狂的なサポーターで埋まると言われるアンフィールド。近年では2019年欧州CL準決勝第1レグのアウェー戦で3―0とされながらも、ホームの第2レグで劇的な4―0勝利を飾ったバルセロナとの対戦で「魔物がいる」と恐れられた。

 「うちの担当者から南野選手を取材した際に『先手を取られても、アンフィールドなら絶対逆転できる、そう思える』というコメントがあったと聞きました。そこまでサポーターが選手を鼓舞するんですね。そこまでの雰囲気、熱気がある。それはやっぱりものすごいことだと思います」

 エバートンとの伝統のマージーサイド・ダービー直前のインタビュー。別れ際に野間社長は「今日、27年振りにアンフィールドを訪れるので、ちゃんとユール・ネバー・ウォーク・アローンを練習しましたよ(笑)。きっと今日もすごい試合になるでしょうね」と満面の笑顔で語ると、スタジアムへと向かう車に軽い足取りで乗り込んで行った。(取材・構成 英国通信員・森 昌利)

 ◆野間 省伸(のま・よしのぶ)講談社第7代社長。1969年1月13日東京都出身。53歳。暁星高校卒業後、慶應義塾大学に進学。法学部政治学科卒業。銀行時代の英国勤務を経て講談社入社。2011年、同社代表取締役就任。バスケット部だったというが、暁星高校時代からのサッカーファン。

 ◆「inspiRED」(インスパイアード) 講談社とリバプールの共同プロジェクト。2005年に奇跡と言われたイスタンブールでの欧州CL優勝をはじめ、不可能を可能にするリバプールと、「Inspire Impossible Stories」と銘打ち、不可能を可能にする奇跡の物語を世界に届ける講談社が手を組んだプロジェクト。今後、共同でさまざまなメッセージやコンテンツを発信する予定。

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