「一生懸命生きているだけ」電流爆破マッチ九州初上陸での大仁田厚の絶叫が教えてくれた「邪道」の生き様

スポーツ報知
九州初上陸となったFMWEの電流爆破マッチで血まみれの激闘を見せた大仁田厚(カメラ・中村 健吾)

 毀誉褒貶(きよほうへん)激しい1人のプロレスラーの生き様を否応なく見せつけられた、まさに「邪道」で熱い戦いだった。

 24日、福岡・柳川市民体育館で行われたFMWE「九州初上陸スペシャル電流爆破マッチ」大会。「涙のカリスマ」大仁田厚(64)が昨年7月4日に旗揚げしたFMWEが初めて九州で大規模な電流爆破マッチを敢行―。そんな1日に早朝から密着してみた。

 今回、ウナギのせいろ蒸しと川下りが名物の柳川市の観光協会、旅館組合中心に「プロレスで柳川を盛り上げよう!」という声があがったことに長崎県出身の大仁田が呼応。町の体育館にマットを敷き詰め、地雷爆破に電流爆破ロケットの設置―。あらゆる危ないギミック(仕掛け)が施されての大会が実現した。

 メインイベンターの大仁田自身、リングを積んだ団体のバスが到着する午前8時半前に会場に到着。地元の高校野球の名門・柳川高の野球部員たちとパイプいすの設置に精を出した。

 午後1時半開始の第1試合前には同団体設立後初となる小学生以下対象、参加無料の「なくそうイジメ!こどもプロレス体操教室」も開催。講師として、大仁田と覆面レスラーの魔苦・怒鳴門が登場。参院議員時代に文教科学委員会に所属し、いじめ問題に取り組んでいた大仁田が「子どもたちにいかに自分のことを守るか、受け身の大切さを教えたいと思います。リングに上がってこい!」と呼びかけると、11人の子どもたちがリング上に。

 子どもたちが後ろ向き受け身を次々とこなして見せると、笑顔で拍手。「僕らレスラーは入門すると、最初の半年はひたすら受け身の練習をさせられる。技を受けた時のダメージが少なくなるように技を覚える前にやるんです。いじめももはや社会問題ですけど、受け身を覚えて、社会を良くしていきましょう!」と全日本プロレスでの新弟子時代を振り返り、訴えかけた。

 そして、迎えたメインイベント。1階席はびっしり埋まり、2階席にも観客を入れ、全725人が観戦するという盛り上がりの中、大仁田が大暴走を見せた。

 入場時からペットボトルの水をぶちまけ続け、リングサイドで観戦した金子健次柳川市長、藤丸敏衆院議員ら地元の名士たちまで水浸しに。リッキー・フジ、スカルリーパーA―jiと組んで、2代目・ミスター・ポーゴ、怨霊、2代目・上田馬之助と対戦すると、地雷爆破あり、電流爆破ロケットのリング直撃あり、電流爆破バットによるメッタ打ちありのなんでもありの戦いを展開した。

 中盤には、リング下に敷き詰められた地雷マットにポーゴともに落下し大爆発。さらにリングに発射された電流爆破ロケットでも吹っ飛んだ。意識朦朧(もうろう)の中、最後はリング上に設置した電流爆破テーブルに怨霊をパイルドライバーでたたきつけ爆破。3カウントを奪った大仁田。

 テーマソングの「ワイルド・シング」が大音量で流れる中、血まみれ、びしょ濡れでマイクを持つと、「何やってるんだと思うかも知れないけど、僕は一生懸命生きているだけです!」と絶叫。「皆さん、立って下さい」と観客を立たせると「コロナに負けるな! 1、2、3、ファイヤー!」と右手を高々と掲げ、興奮の坩堝(るつぼ)と化した初の九州での電流爆破マッチを締めくくった。

 この日、私はカメラマンも兼ねていたため、間近で爆破を浴び、鼓膜がキーンと鳴り続ける状態で大仁田の絶叫を聞いた。確かに涙声だったし、爆破後にリング上に立ち込めた白煙の向こうに見えた、その大きな目は「どうだ! 見たか」とばかりに潤んでいた。

 1985年の最初の引退から7回に渡って引退、復帰を繰り返してきた大仁田には確かに「嘘つき」などのプロレスファンの声がある。それでも地雷マットへの落下も、電流爆破バットによる激しい殴打も平気で受け続け、生傷とともに戦い続ける64歳に725人の目が釘付けになり、ダイレクトに伝わる「痛み」に、その絶叫の持つ説得力に、思わず見入ったのは事実。そこで展開されたのは、確かに「プロレス」としか呼びようのない世界だった。

 一夜明けた25日には自身のツイッターに今大会の爆破の瞬間の写真を貼り付けると「プロレスはライブが最高」というハッシュタグのもと、「自分の好きなこと胸いっぱいやればいい」と笑顔の絵文字とともにつづった大仁田。「まだ、電流爆破なんてやっているのか」というコメントに対しては「いいじゃあないか 好きでやってるんだぜ 否定するのは勝手だが、俺たちは好きな道を行くだけさ!」とも言い切った。

 そう、匿名の陰に隠れて、現役に固執するその生き方を批判するのは簡単だ。ならば、あなたはどんなに傷だらけになっても「好きな道を」歩む生き方を選べるのか? 64歳になった大仁田の全身縫い傷だらけの戦いは、そんなことを真っ正面から問いかけてくる。

 なぜ、どれほど毀誉褒貶(きよほうへん)の声があっても、一度、会場に足を運んだ観客が「涙のカリスマ」に引きつけられるのか? 試合後にサインを求めて行列をつくったファンをびしょ濡れのリングコスチュームのまま次々と抱きしめ続ける「ザ・プロレスラー」の笑顔に、その答えがあった。(記者コラム・中村 健吾)

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