女優の黒島結菜(25)がヒロインを演じるNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」(月~土曜・午前8時)が11日にスタートした。社会現象となった前作「カムカムエヴリバディ」は朝ドラ史上初めてヒロインを3人起用した異色作だったのに対して、本作は1人のヒロインを描く“王道の朝ドラ”といえる。では“王道”の魅力とは何か。制作統括を務める小林大児チーフプロデューサー(CP、49)に聞いた。
「ちむどんどん」は沖縄北部のやんばる地域で、農家の4きょうだいの次女として生まれ育ったヒロイン・比嘉暢子が上京し、沖縄料理店を開くことを夢見る物語。初回の世帯平均視聴率は16・7%を記録し、「カムカム―」の初回世帯平均16・4%を0・3ポイント上回った。(数字は関東地区。ビデオリサーチ調べ)
約5か月余りの放送の中で、ヒロインが3人登場した「カムカム―」はジェットコースターのような速い展開を見せ、劇的なフィナーレを迎えたことは記憶に新しい。一方で本作は、他のきょうだいの話も描かれる中、ヒロイン・暢子の成長譚が軸となる。従来の朝ドラのスタイルに戻った格好だ。
小林CPは、朝ドラでは「ちゅらさん」(2001年)、「純と愛」(12年)、「ごちそうさん」(13年)といった人気作に携わってきた。「カムカム―」について聞くと「話題になるだけの力を発揮してくれているのは、とてもうれしい」。続けて「でも出来れば、より良いものを作りたいとスタッフ全員が思っている」と意気込んだ。
両作品のスタイルの違いに関しては「カムカムの企画との比較は1ミリも考えていない」ときっぱり。「朝ドラは、15分間で息も切らせぬテンションで描くサスペンスフルなドラマでもないですし、それが求められてもいないと思う。毎朝気持ちよく、一人の主人公に感情移入していくというのが見やすい」と語った。
さらに、本作では「一人の女の子の何十年という歳月を濃く描きたい。100年を描くより、50年を描く方が倍くらい細かく、一見どうでもいいことも描ける。そういうことは(脚本担当の)羽原(大介)さんも大事にしてくれているので、その良さを表現していきたい」と説明した。
20代の頃、4年ほど同局の沖縄放送局に勤務してたという小林CP。「ちゅらさん」で培った経験を生かしながら、撮影に取り組んだ。雄大な自然はいうまでもなく、もう一つの“主役”である料理の見せ方にもこだわりが伺える。「できることなら日本全国の皆様に一人残らず見ていただきたい。それに値するものが作れているのではないかと思っている」
ドラマは昨秋クランクイン。11月から12月にかけて3週間ほど行われた沖縄での撮影では、コロナ下とあって「衛生班」を帯同させたという。だが、そうした苦労を感じさせない大らかな人々の営みと大自然が、毎朝のように画面を通して目に飛び込んでくる。はたして暢子の人生は、いかに“濃く”描かれていくのか。注目される。
(江畑 康二郎)