8月に東京で始まる舞台「すぐ死ぬんだから」(内館牧子作、4~14日、池袋あうるすぽっと他)で朗読劇に初挑戦する女優・泉ピン子(74)が、このほど取材に応じた。公私に交流の深かった脚本家・橋田壽賀子さん(享年95)の旅立ちから4日で1年。恩人にささげる舞台に「絶対、失敗できない」と新境地への覚悟を語った。
「私はあがり症。器用に見えて不器用。本当は舞台が怖い。でも『渡る世間は鬼ばかり』で橋田先生、視聴者に育ててもらった。(公演で)全国をまわり『ありがとう』と伝えたい。“生ピン子”見たさでいいから来てほしい」。チケット完売にも強くこだわる。
ピン子は78歳の主人公・忍(おし)ハナなど複数の役を演じる。夫の遺言で別の家庭を持っていたことを知り、死後離婚の話に発展。自身も夫婦関係で悩んだ時期があり「役と重なった」。内館氏は脚本家でもあるが、才能を早くに認めていた橋田さんのアシスタント時代がある。ここにも橋田さんとのつながりがある。
女優人生の転機となる。橋田作品では、膨大なセリフを一言一句、完璧に覚えてきた。しかし「念願だった」という朗読劇では「あえて覚えない。毎回、違う間で新鮮に演じたいから」と全く違う形で役にアプローチ。共演の村田雄浩(62)はピン子について「パワーと存在感がすごい」と圧倒されるという。
大恩人との別れから1年。「エンディングノートがあると言ってたけどウソだった。出てきた日記帳は後々、変に扱われるといけないので燃やして処分しました」。託された遺品整理も振り返ったが、役者として第一線で活躍し続けることこそが、何よりの恩返しとなる。