◆第94回センバツ高校野球大会第10日▽準決勝 近江5×―2浦和学院=延長11回=(30日・甲子園)
決勝は昨夏に続いて近畿勢同士の対決となった。近江は延長11回に大橋大翔捕手(3年)がサヨナラ3ラン。エース・山田陽翔(はると、3年)が170球を投げ、4試合連続完投勝利で滋賀県勢初の甲子園優勝に王手をかけた。大阪桐蔭はプロ注目の松尾汐恩捕手(3年)が今大会1号を放つなど2試合連続2ケタ得点で勝利し、春夏連覇した18年以来4年ぶりの決勝に進んだ。
同点の延長11回1死一、二塁。近江・大橋のサヨナラ3ランが左翼席に飛び込むと、山田はベンチを飛び出し、左足の痛みも忘れて大きく跳びはねた。170球の熱投。21年の球数制限実施後、初の4試合連続完投勝利の山田は「監督さんが投げさせてくれたおかげ」と汗を拭った。
センバツで県勢初、代替出場校では春夏通じて初めての決勝進出に導いたエースは、5回の打席で左かかと付近に死球を受け、臨時代走が送られた。治療を終えると、交代も考えていた多賀章仁監督(62)に「いかせてください」と志願して再び登板した。
責任を全うした。「エースで4番で主将。(マウンドを)降りたらいけないと思っていた」。患部を冷やし、テーピングで固定して直後の6回2死一、二塁の危機を乗り越えると、イニング間には左足を引きずりながら8回の135球目にこの日最速の145キロを計時。その後は11回まで1安打。圧巻の投球を演じた。
右腕の力投に応えたのが女房役の大橋だった。「どうにかしたい」と振り抜いた一撃は小学校から始めた野球人生初アーチ。春夏通じて滋賀勢初のサヨナラ弾だ。校歌を聴きながら、山田は「大橋を信用している。バッテリーが一つになれた」と誇らしげに笑った。
多賀監督は「このまま投げさせていていいのかと…。魂のこもったマウンドさばきは本当にすごいと思った。本当にすごい男」と涙で何度も言葉を詰まらせた。25日の2回戦以降が「1週間で500球以内」の球数制限対象となり、決勝で投げられるのは116球。試合後、西宮市内の病院で「左足関節外果部の打撲症」と診断された山田は「痛みはあるが、投げられるのであれば投げさせてもらいたい」。開幕直前に京都国際の辞退で代替出場。あと1試合。頂点へのマウンドも投げ抜くつもりだ。(宮崎 尚行)