◆カタールW杯アジア最終予選▽B組第9戦 日本2―0オーストラリア(24日・シドニー)
サッカー元日本代表の中村憲剛氏(41)が日本がW杯出場を決めたオーストラリア戦を総括。イメージと現実のギャップに苦しみながら最後の5分間で試合を決めた三笘薫を評した。
* * *
日本は相手DFラインの背後に走る浅野にロングパスが通り、そこからフィニッシュシーンを何度も作った。経験の浅い相手ボランチからボールを奪ってから、速攻を仕掛けることもできた。また、本来であればボールを握りたいオーストラリアも主力の負傷で長いボールを多用してきた。結果、陣地を行ったり来たりするオープンな展開が生まれた。敗戦だけは避けなければいけない試合。一度も勝ったことがないアウェーの地ということを考えれば、得点の予感、失点する怖さが倍増したスリリング過ぎる前半だった。
浅野のスピードを生かす戦い方、サイドを起点に崩す形も機能していたと思う。ただ、思い描いた展開ではなかったはずだ。日本は相手陣内でボールを握りながらゴールを奪うことを目指し、奪われた瞬間に切り替えを早くして即時奪回する戦い方をベースに、相手の速攻のリスクを念頭に置いてここまでプレーしてきた。しかし、この試合では想定以上にロングボールを含めどんどん相手の守備網にかからずに攻めることができたことで、選手たちは「攻められる」「決められる」と感じたのだろう。試合前に想定したゲームのイメージと現実のギャップが大きすぎたために起きた展開だったとも言える。後半は両チームが修正し、ゲームは落ち着いた。
そして、何と言っても三笘の2得点。すごい、という形容詞以外、思い浮かばない。今予選、出番はオマーン戦の1試合のみ。更にこの日はW杯出場が決まる重圧、雨、ピッチコンディションの問題があった。どれか一つがあったとしても、自分の仕事を遂行するのはとても難しいこと。その中での2得点。どれほど頼もしかったか。森保監督の采配もはまった。1点目は川崎時代にも見たことのある形で、山根、守田と3人とも同じ絵が見えていたことを感じさせた。
ここからW杯へ向けた準備が始まる。相手はアジアから世界に変わる。アジア予選のようにボールを持てない試合も出てくるかもしれないが、この予選で築いてきたベースを軸にして、世界に立ち向かってほしい。今の日本にはどれだけの耐久力が備わっているのか。ビルドアップの安定性はどうか。これまで積み上げてきた主体的にボールを握り、プレスをかける形でぶつかっていくことが日本サッカーの未来につながっていくと思う。W杯での活躍を期待しています。(元日本代表、川崎MF=中村憲剛)