カブスは昨季優勝争いから脱落すると、リゾ、バイエス、ブライアントと2016年の世界一に貢献した強打の3選手を相次いで放出した。そのため、左翼のハップこそ25本塁打を放ったが、中堅オルテガが11発、32歳のヘイワードが8発と打線が一気に弱体化し、強打者補強が急務だった。
それだけにメジャー現役最強の5ツール選手、マイク・トラウト外野手(エンゼルス)の日本版と評価される鈴木誠也外野手への評価も高く、メジャー各球団が獲得を目指していた。
昨年の東京五輪でも日本代表の4番として本塁打を放ってチームをけん引し、金メダル獲得に貢献。バッティングに関し、在日メジャースカウトは「穴がなく、パワー、確実性はメジャー級。最初はまごつくだろうが、1年目で2割8分、20本前後の本塁打は打つだろう」と話す。その上で、彼ならメジャーの動くボールに慣れれば打率3割、30本塁打の常連になるのではないかと予想する。
脚力の面では19年に25盗塁をマーク。4番に定着してからは一桁に終わっているが、次の塁を貪欲に狙うアグレッシブさを持ち合わせており、走塁面では平均以上とする。打撃とともに評価が高いのが外野の守備力。フットワークと強肩は日本でも定評があり、ゴールデン・グラブに5度選出されている。また、バックホームだけでなく、走者の動きを機敏に見極め、各塁に投げての補殺も多く、野球IQの高さも証明されている。
松井秀喜、イチロー、大谷翔平らメジャーで活躍した日本人野手はいずれも左打者。右打者でのメジャー入りは過去5人いるが、及第点といえる「即レギュラー」となると、2005年の井口資仁二塁手(ホワイトソックス)、06年城島健司捕手(マリナーズ)の2人しかいない。最多本塁打も城島1年目の18本。これまであまり通用しなかった日本人右打者として、鈴木が新たな挑戦を始める。(蛭間 豊章=ベースボール・アナリスト)