箱根駅伝2位の順大は「令和のクインテット」を柱に16年ぶり12度目のV奪還へ 西沢侑真新主将「全員が区間賞争いできるレベルに」

スポーツ報知
西沢侑真新主将

 1月の第98回箱根駅伝で順大が総合2位となり、15年ぶりのトップ3入り。就任7年目の長門俊介監督(37)が4年時の2007年大会以来となる、12度目の総合優勝&打倒・青学大に向けて、指揮官は「令和のクインテット」と名付けた1万メートル28分台の新4年生5人のさらなる成長をカギに挙げる。西沢侑真新主将(3年)は「大学駅伝3冠」獲得を22年度の目標に掲げ、「クインテット全員が区間賞争いできるくらいのレベルに」と強い覚悟を持って勝負の1年に挑む。

 茄子紺の伝統のユニホームが、箱根路で久しぶりに躍進した。順大は往路5位、復路5位で07年総合優勝以来の箱根駅伝表彰台となる総合2位に入った。長門監督は「ハラハラ、ドキドキ。最後はヒヤヒヤと多くの感情を抱きながら見ていました」と苦笑いで振り返った。その経験者7人が残り、23年は16年ぶりの頂点への期待が膨らんでいる。「来年目指すはもう頂上しかありませんが、駒大はタレントぞろい。中大も勢いづいているので、上ばかりを見ていると足元をすくわれます」と指揮官は気を引き締めている。

 それでも、打倒・青学大への青写真も既に描いている。「青学大との約11分差を詰めて、いかにリードさせないように戦っていくか。ウチは2ケタ区間が4つもあっての2位。1区や9区などまずはデコボコした失敗を無くせば5分は良かったと思います。残りは1人30秒は詰めていかないといけない。何とか失敗をなくして、力をつけて差を詰めていきたいです」。

 昨夏の東京五輪3000メートル障害7位のエース・三浦龍司(2年)は、世界陸上や5000メートルの日本記録などを目標に、今年もスピードを磨く方針だ。「『5000メートルで日本記録を出すくらいじゃないと、3000メートル障害で世界と戦えない』と本人とは話しています」と長門監督は明かした。指揮官が箱根路制覇への主軸として期待を寄せるのは今年の1、3、5、7、9区を務めた新4年生の平駿介、伊予田達弥、四釜俊佑、西沢、野村優作の5人。昨春のトラックシーズンではいずれも順調に成長を遂げ、関東インカレで16年ぶり16度目の優勝を果たした。野村、伊予田は1万メートルで5位、6位。ハーフマラソンでも四釜が4位に入ってその原動力となった。1万メートル28分台のスピードランナーが13人も誕生し、チームとしての選手層も厚みを増した。

 そして21年秋の駅伝シーズンを前に指揮官は平、伊予田、四釜、西沢、野村の同学年の実力者5人に「令和のクインテット」と名付けた。故障を抱えていた西沢を除く4人が走った10月の出雲駅伝は10位。同じく4人が出走した11月の全日本大学駅伝では20年ぶりの3位に入り、トラックからの上昇気流をロードにも持続して見せた。

 順大で「クインテット」と言えば、2000年度に史上2校目の大学駅伝3冠を成し遂げた岩水嘉孝(現・資生堂監督)、野口英盛(現・積水化学監督)ら“最強世代”5選手のことを指す。「オールラウンダーの岩水さんや、駅伝は外さないロード職人の野口さんたちは練習実績を見てもすごい。それぞれ強い個性があって、僕もあこがれていました。新4年生の5人はまだまだ未熟ですが、記録では(元祖クインテットを)上回れる力がある。自覚を持って欲しくて『令和のクインテット』と呼びました。この1年で、それくらい強い存在になってほしいと思います」と長門監督は命名した意図を明かした。

 1月の箱根駅伝後、西沢が静岡・浜松日体高時代以来となる新主将に就任した。2007年の箱根駅伝優勝チームの主将は、“山の神”今井正人が務めていた。長門監督は「今井と話したら、『学生時代に『背中で引っ張っていく』と言うのは逃げだよね。皆を巻き込んで、言葉で引っ張っていくのが本当のリーダーじゃないか」と言っていました。西沢は周りにも厳しいことを言えます」と、指揮官は高いキャプテンシーを評価する。新4年生で22年度のスローガンを「覚悟の証明」と定めた。新主将は「『覚悟と挑戦』だった去年のチームの意思も継いで。競技力の高いメンバーがそろっているので、時には厳しいことを言い合いながら、まとまりを作っていけたらいい」と説明した。

 新チームは「大学駅伝3冠」を大目標に掲げた。「僕たちが1年生の頃から『4年時には3冠を目指したい』と言い合ってきた。その思いは今も変わらなかったので。中でも箱根駅伝の優勝にはこだわりたいですね。一番影響力の強い箱根駅伝で優勝したら、どんな景色が見られるんだろう、と。順大をしっかりと世間の方にアピールしたいです」と西沢主将はうなずいた。「順大が強い時は4年生が強いチーム。『令和のクインテット』と呼ばれるのは素直にうれしいです。期待して注目されている分、5人全員がどの駅伝も区間賞を取れるくらいにレベルを上げて、結果を残していきたい。(元祖)カルテットの皆さんが、駅伝で優勝された時のお写真は見たことがあります。やはり比べられると思うので、僕らも結果を残さなきゃいけないと思います」と大学最終年への強い決意を口にする。

 来年の箱根駅伝も今年同様の超高速レースになると想定すると、「往路重視」で主力は今年と起用区間が大きく変わらない可能性もありそうだ。長門監督は「今年と同じ展開なら、1~4区まで主力を並べないとどうにもならない。1区からあれだけ超高速の展開なら、三浦を1区に使う価値も出てくると思いますね。それぞれの持ち場で役割を理解した上で、年間を通して取り組む。強化メンバーには1人でも多く台頭してもらいたいですし、主力クラスは年間を通して箱根に向けて取り組ませたい」と見据えている。

 タイム差がつきやすい山場の特殊区間5区、6区の育成にも今年は重きを置く方針だ。「5区で70分を切る走りができるか。走力アップよりも、上りに特化した強化を積んでいかないといけない。四釜が、今井の記録に近づくイメージを持ってくれたら」と“令和の山の神”の出現も期待する。また、1月の箱根で区間賞を獲得した6区と8区の牧瀬圭斗、津田将希の4年生2人は卒業する。「6区は既に代わりのめどは立っていて、58分30秒くらいでは下れると考えています。8区も『津田先輩があれだけ走れたんだから』と、そのデータをもとに追いかける後輩が出てきてくれると思います」と新戦力の台頭を待望している。

 4月には、5000メートル13分台の村尾雄己(佐久長聖高3年)ら新入生も加わる。とはいえ、順当にいけば、来年の箱根駅伝でも「令和のクインテット」5人は主要区間での起用が濃厚だ。「5人ともまじめで良い子ですが、まだレースや駅伝においての個性が確立されていない。自分に与えられた役割がまだあいまいな部分がある。自分たち(が在学中)の頃は、『ここは俺の区間だ』というのを持っていた。もうちょっと図々しさや勝負への欲、気持ちの強さが欲しい。青学大や駒大には勝たなきゃいけない、という気持ちの強さがある。前回(の箱根駅伝)2位だから(今回は)優勝しかない、という気持ちでは負けてしまうと思う。何としても、という強い気持ちがないと。早い段階で、この区間はもうお前に任せる、というのが何区間で出てくるか」と4年連続で箱根9区を走り、4年時には区間賞を獲得して総合優勝に貢献した長門監督はあえて注文をつけた。5人の速さに強さと個性が加わった時、勝利への“五重奏”が完成する。(榎本 友一)

 ◆「クインテット」 順大・沢木啓祐監督の下、1998年に順大に入学した入船満、岩水嘉孝、奥田真一郎、坂井隆則、野口英盛の5人の呼称。いずれも学生3大駅伝で安定した実力をいかんなく発揮し、2000年度は史上2校目となる出雲、全日本、箱根の駅伝3冠を獲得。さらに日本学生対校選手権(インカレ)も合わせた史上初の4冠も成し遂げた。出雲(99、00、01年)、全日本(00年)、箱根(98、01年)と3大駅伝で計6冠を順大にもたらす黄金世代となった。

 ◆順大 1952年創部。箱根駅伝には58年に初出場。66年に初優勝し、歴代4位の11回優勝。出雲駅伝は優勝3回(99~2001年)。全日本大学駅伝は00年に優勝し、同年度は学生駅伝3冠。タスキの色は白地に赤。主なOBは「初代・山の神」今井正人(トヨタ自動車九州)、08年北京五輪400メートルリレー銀の高平慎士氏、16年リオ五輪3000メートル障害代表の塩尻和也(富士通)。

 ◆長門 俊介(ながと・しゅんすけ)1984年5月4日、長崎市生まれ。37歳。諫早高から順大。箱根駅伝は4年連続で9区を走り4位、6位、3位、区間賞。4年時の2007年は同期の今井正人らとともに総合優勝の立役者になった。卒業後はJR東日本に入社し、ニューイヤー駅伝出場。11年に退社し順大コーチに就任。16年4月に駅伝監督に昇格。リオ五輪の塩尻和也(現・富士通)、東京五輪の三浦龍司と2人の学生五輪ランナーを輩出する。

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