第13回冬季パラリンピック北京大会は4日夜、北京市の国家体育場(通称「鳥の巣」)で開会式が行われ、開幕した。2月20日の北京五輪閉幕直後の同24日にロシア軍がウクライナに侵攻。戦時下で開催される障害者スポーツの祭典となった。大会から排除されたロシアとベラルーシの約80人を除く、46か国・地域から約560人が参加し、13日までの10日間、6競技78種目でメダルを争う。日本勢はパラアイスホッケーと車いすカーリングを除く4競技に29選手が参加。前回平昌大会を上回る成績を目指す。
緊迫した国際情勢が、障害者と健常者の「共生」を理念に掲げる大会に暗い影を落とす開会式となった。国際パラリンピック委員会(IPC)はロシアと、支援したベラルーシの出場を一度は条件付きで認めたが、一転して3日に排除を決定。大会スローガンの「一起向未来(共に未来へ)」には国際社会の連帯と、分け隔てない社会の実現への願いが込められたが、その望みは風前のともしびとなった。開催国・中国のパラスポーツ振興は強権による国威発揚の側面が色濃く、加えて戦時下と異常な状況だ。パラリンピックが掲げる「平和」と「共生」の理念が揺らいでいる。
「とても皮肉な現実だ。大会にはさまざまなタイプの選手がいて、その多くが戦争でけがや障害を負っているのだから」。陸路で国境を越え、北京入りしたウクライナ・パラリンピック委員会のスシケビッチ会長は言葉を震わせた。
IPCのパーソンズ会長は開会式であいさつし「世界で起こっていることに恐怖を感じている。21世紀は戦争や憎しみではなく、対話と外交の時代だ」と語り掛けた。混迷する国際情勢を受け、冒頭で平和のメッセージを訴える異例のスピーチとなった。
国連による「五輪休戦決議」について「違反することなく、順守されなくてはならない」と指摘。障害者スポーツの国際統括団体として「差別、憎しみ、争いのない、よりインクルーシブ(分け隔てのない)な世界を目指す」と宣言した。
締めくくりでは中国語、英語、母国語のポルトガル語の3か国語で「ありがとう」。最後に「平和を!」と声を張り上げ、力強く両拳を握りしめた。
分断が広がる社会に障害者スポーツの祭典が何を示すのか。10日間の熱戦で真価が試される。