【番記者の視点】川崎、左サイドバック“全滅”の危機救ったMF塚川孝輝 思い出されるジーコ氏の言葉

川崎・塚川孝輝
川崎・塚川孝輝

◆明治安田生命J1リーグ▽第10節 川崎2―1浦和(2日・等々力)

 川崎は日本代表DF山根視来(28)が勝ち越しゴールを決め、浦和を2―1で下した。

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 川崎にアクシデントが起きたのは前半24分。DF登里享平がピッチに倒れ込み、続行不可能の合図を首脳陣へ送った。DF登録の選手はベンチにおらず、MF塚川孝輝に白羽の矢が立った。練習でも一度もやったことがないポジションだったという。

 DF車屋紳太郎は全治6週間の負傷で離脱中。前節でプロ初ゴールを決めたDF佐々木旭も体調不良でベンチ外。鬼木達監督が左サイドバックの頭数として想定していたであろう3人が起用不可となった。

 塚川は明らかに不慣れだった。ポジショニングもあやふやで、顔も下がっていた。案の定、自身が与えたFKからチームは先制点を与えてしまう。「戸惑いもあり、特に自分のファウルからの失点で『ああやばい』となった自分がいた」

 しかし、後半から気持ちを切り替えた。荒削りで、少々不格好だったかもしれないが、十分に奮闘した。「やるしかない、という気持ちになった。自分ができるプレーをやろうと。サイドバックという感覚をなくし(本職の)アンカーをやっているように臨みました」。前半は“穴”だったが、後半はすっかり“起点”に。山根の決勝点も、巻き戻せば塚川の組み立てから始まったものだった。

 ジーコ氏の言葉が思い出された。2018年、過密日程に直面していた鹿島は、ACL決勝の前後に行われたリーグ戦2試合を控え組中心のメンバーで戦うことになった。テクニカルダイレクター(当時)を務めていたジーコ氏は、選手に「チャンスは自分のタイミングではなく、チームのタイミングで来るものだ」と語りかけたという。

 どれだけ調子が良くても、使われない時は使われない。だから腐るな。どれだけ自信を失っていても、使われる時は使われる。だからやるしかない。チャンスを生かすも殺すも自分次第。そんな意味が込められていた。

 鬼木達監督も「今季はいろいろな意味で総力戦だと思っている。チーム全員に、『こういう時こそ勝ってやろう』という意思を感じられた」と振り返った。川崎は今季3勝目を挙げたが、1勝目(FC東京戦)は途中出場のMF遠野大弥がアシストをマークし、2勝目(鹿島戦)は先発に抜てきされたFW知念慶とDF佐々木旭がゴールを決めた。そしてこの日、塚川の奮闘である。こういうチームは、強い。(岡島 智哉)

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