阪神ナインが23日、矢野燿大監督(53)を胴上げして優勝を“予祝”した。糸井嘉男外野手(40)が「優勝に向けて練習しているけど、これはまだ練習していない」と、西勇輝投手(31)とともに発案。キャンプイン前日に今季限りでの退任を表明した指揮官が早くも3度、宙を舞った。
投打の日本人最年長によるサプライズ。練習前の円陣で「一日主将」の2人が絶妙に掛け合った。西勇が「予祝」と書いたTシャツを着て「未来の姿を先に祝うことで現実に引き寄せること」と解説。「みんないろいろ予祝してきたけど、一つできていないことは何でしょう?」と問いかけると、背番号7が「一つしかないやないか!」と上着で隠していたTシャツを披露。こちらは「胴上げ」の3文字が書かれていた。「ホンマは(背番号の)88回やけど、矢野“さん”の3で」。天然キャラの“超人”らしい謎の設定で歓喜の予行演習。矢野監督は「気持ち良かった。もう、感謝しかない」と感激した。
“予祝”は元々、矢野監督が取り入れてきた儀式で、選手らにも教えてきた。糸井は、胴上げの感触に「いい背中の筋肉してました」と独特の感想を述べた後、表情を変えた。「この4年間、僕らの知らないことをよく教わったので」と、感謝と尊敬を込めた胴上げだったことを説明。「絶対にやり遂げたいこと。予祝で引き寄せられると僕は思っている。絶対に胴上げします」。次は室内練習場ではなく、晴れた甲子園で!最終クール初日に、粋な演出で士気を高めた。(安藤 理)
◆矢野監督の予祝 矢野監督は就任2年目の20年、春季キャンプ前の1月20日に日本一をファンに報告した。テレビ番組に生出演して「2020年11月15日、第7戦、タイガース日本一になりました!」とガッツポーズ。日本シリーズの日程も考慮して宣言した。だが、この年は2位。9月に選手らが新型コロナ集団感染に見舞われるなど、7・5ゲーム差で巨人に連覇を許した。
◆吉田義男監督の“優勝会見” 阪神の「暗黒時代」だった98年、エイプリルフールの4月1日に吉田監督が「優勝した」という仮定で記者会見を開いた。開幕前に外国特派員協会で実施。壇上のコップの水を飲み「お酒ですな」と勝利の美酒に見立て「こんなにうれしいことはないです。身に余る祝辞を賜りまして」と歓喜に浸った。