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山口恵梨子女流二段、勝率7割の進撃 実力者の伊藤沙恵女流三段を清麗戦予選準決勝で撃破

スポーツ報知
好調が続く山口恵梨子女流二段

 将棋の山口恵梨子女流二段(30)が17日、東京都渋谷区の将棋会館で行われた第4期清麗戦予選トーナメント準決勝で伊藤沙恵女流三段(28)に先手の107手で勝ち、決勝進出を決めた。デビュー14年目の今期、キャリアハイの進撃を続けている。本局の勝利で通算21勝9敗とし、ついに勝率7割の大台に乗せた。

 今の勢いを、そして自らのニックネーム「攻める大和撫子(やまとなでしこ)」を盤上に表現するような勝局だった。実力者の伊藤との一局は相居飛車戦になり、戦型は矢倉。中盤まで形勢は互角だったが、一瞬のスキを突いて敵陣に銀を打ち込む一手から山口が攻勢に出る。後手の玉頭での局地戦となったが、伊藤に反撃の機会を与えずに攻め倒した。「攻めがつながっているか確信は持てなかったんですけど、自玉に王手が掛からない形なので、攻めが切れなければ、とだけ思っていました」。感想戦ではうれしい思いに素直に従うような笑みをこぼした。

 今期清麗戦では初戦から清水市代女流七段、中村真梨花女流三段、水町みゆ女流初段、香川愛生女流四段を連破。加藤桃子清麗への挑戦権を4人で争う本戦入りに向け、甲斐智美女流五段―山根ことみ女流二段戦の勝者と決勝を指すことになった。

 2008年デビューの山口の通算成績は139勝124敗。タイトル挑戦などの経験はないが、番組出演や解説会の聞き手など普及面で存在感を放ってきた。愛称は「えりりん」。10万人超のユーチューブチャンネル登録者数が証明する人気を誇るが、今期はプレイヤーとしてもファンを沸かせている。女流王座戦と倉敷藤花戦でベスト4に進出。勝率7割はランキング4位の好成績となっている。

 感想戦終了後の山口に聞いた。

 ―対戦成績0勝5敗だった伊藤さんを攻め倒した。好調が続いている。

 「去年の1月から普及活動を以前の10分の1くらいに減らして、できた時間を将棋の勉強に充てるようになったからでしょうか…。でも、将棋の勉強ばかりをすることが正しいと思っているわけではなくて、普及活動を全力で頑張って下さる方がいて将棋界は成り立つもの、という思いは変わりません」

 ―なぜ普及活動を減らそうと?

 「忙しくて健康診断も受けなかったりすることが続いていたんですけど、受けてみたら身体に負担をかけていたことが分かって、これはダメなんじゃないか、ちょっと休ませてもらおうと思いました。生活から変えていこうと思った時、もう一度ちゃんと将棋を頑張りたい、と思うようになったんです。将棋界を大きくするのは普及で、女流棋界を大きくするのは女流棋士が将棋を頑張ること。今の自分にできることは、女流棋界を盛り上げる一駒になることなのかなと思ったんです。29歳になって将棋一筋になったので、後輩たちにいろんな道を見せたいという思いも少しあります」

 ―番組や解説会で聞き手を務める時の山口さんの独特のキャラクターを見たい人も多いと思います。

 「6歳から将棋番組を見てきて、ずっと思ってきたのはもっと笑いを増やしたい、ということだったんです。聞き手を務める時、年上の棋士の先生に対してもあえてズケズケと攻めていくのが自分の持ち味だと思っているんですけど(笑)、30歳になって年下の先生に対してあの感じで攻めるのはちょっと違うかな…という思いも正直あります」

 ―でも「普及の時間を減らして将棋に取り組む時間を増やしたから勝てるようになりました」というほど甘い世界でもないでしょう。

 「いや、自分は全然弱いので、けっこうホント、運で勝ててることが多いんです。すさまじくひどい将棋をけっこう指してしまっているので。ちゃんと内容で勝てるようにしたいです。弱い自覚だけはちゃんとあるので、頑張りたいです」

 ―女流名人戦(報知新聞社主催)予選でも決勝に進出。6期ぶりのリーグ入りを懸けて佐々木海法女流1級との一局に臨みます。

 「女流名人リーグ、入りたいんですよ~。いや~ホント入りたい。とても入りたい。決勝では良い将棋を指したいです!」

 気付けば、直近は10勝1敗。陰なる努力は並んだ白星となって結実し、女流棋界に静かな活力を与えている。(北野 新太)

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