◆富士フイルム・スーパー杯 川崎0―2浦和(12日・日産スタジアム)
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完敗だった。
失点は、そこまで悲観することではない。1失点目は時間帯こそ最悪だが、ゴチャっとした形から相手にボールが渡った事故のような要素もあった。誰が悪い、というより酒井が凄い。
2失点目は車屋が先にボールに触ったため心証は悪いが、0―1の終盤に2対2の数的同数で守備をすることは「サッカーあるある」だ。防げることもあれば、決められることもある。むしろ、0―1で終盤を迎えてしまったことに問題があった。
いかんせん、攻撃が機能しなかった。無得点。シュート8本。相手GKのビッグセーブだけでなく、相手DFの好プレーも記憶にない。足元で受ける場面が多く、動き出しが少なかった。迫力に欠けた。
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2月18日、Jリーグ開幕戦でこの内容と結果だったら、ちょっとマズい。「リーグ3連覇に黄色信号」などと見出しを立てるメディアもあるかもしれない。
2月12日、Jリーグ開幕の1週間前でこの内容と結果なら…どうだろうか。
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開幕1週間前に、地上波放送がある公式戦で賞金3000万円を賭け、チームの進捗状況を確かめられるのは、前年リーグ王者と天皇杯王者に与えられた特権だ。
当然、開幕までの1週間の練習で修正できることには限りがある。しかし「現在地を知る」ことができた意味は大きい。今季も、開幕と同時に過密日程に突入する。もしかしたら、紅白戦は1か月ほどできないかもしれないのだ。
立ち上がりに猛プレスをかけられると、ひるんでしまうことがわかった。中盤の強度が足りないことがわかった。現状、川崎より浦和の方が強いことがわかった。つまりこのままいけば、リーグ3連覇ができないことがわかった。この事実は大きい。ソクラテスが言うところの「汝自身を知れ」が他クラブより1週間早くできたことは、大きなアドバンテージとなり得る。
鬼木監督は「いい部分もあれば、まだまだの部分もいっぱい見えた。開幕に向けて修正するためのいい試合だったなと思っています」と語った。強がっているようには聞こえなかった。むしろ、大会開催への感謝をかみ締めているように聞こえた。
背後への動き出しが少なかったことについて、鬼木監督は「この時期によくあること」と表現した。説明を要約すると「連携が発展途上なので味方だけを見てしまう」「相手の動きを見れず、裏をかこうとする意識が希薄になる」ということらしい。5年で4回スーパー杯出場の“常連”クラブを率いる指揮官がそう言うのだから、間違いないのだろう。
この90分で見つかった課題を挙げればキリがない。左FWがむむむっ、インサイドハーフがあれれっ、アンカーがおろろっ、センターバックがあららっ。悲観しているサポーターもいるだろう。SNSやポータルサイトでこの記事につく匿名コメントは、悲観論が一定数を占めるに違いない。チャンス到来とばかりに拳を握って破顔しているライバルクラブのサポーターも少なくないだろう。
やはり、今の川崎は「ちょっとマズい」状況なのか。後に「あれがあったから今がある」となるのか。最終的な答えが出るのはシーズン終盤だが、2月18日、FC東京との開幕戦でぼんやりと見えてくるはずだ。(川崎フロンターレ担当・岡島 智哉)
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