楽天の育成選手たちのサバイバル競争が始まる。現在のチームの支配下登録数は「68」。残り2席をめぐって、16人がしのぎを削る状況だ。138番をつける小峯新陸(しんり)投手(20)は、12日の練習試合・阪神戦(宜野座)に登板予定。昨年の秋季練習でアピールに成功し、1軍キャンプに抜てきされた3年目右腕が今季中の支配下登録へ向けた覚悟を明かした。
育成3年目の小峯にとっては分岐点となる時期がきている。今季中に目立った活躍ができなければ、育成選手の制度上、オフに自由契約となる。「今年で一度自由契約になる。その前にしっかり結果を出して支配下を勝ち取れるようにやっていきたい」と熱く言葉を発した。当然、再契約の可能性もあるが、死にものぐるいで限られたイスを奪いにいくつもりだ。
肩周りの可動域が広い利点を生かしたテイクバックの大きいフォームが特徴的。腕が遅れて出てくるため、打者はタイミングが取りづらいというメリットがある。最速152キロ超の直球に加えてカーブ、スライダー、スプリットを駆使し、強気に攻めるスタイルだ。オフは弟子入りした則本との合同自主トレでエース直伝のスライダー習得に励み、キャンプでは田中将に実戦仕様の配球の組み立て方について助言を請うなど貪欲な姿勢を示す。
9日のフリー打撃では打者7人に対し、安打性は2本。制球面に粗削りなところはあるが、この時期で151キロをたたき出した。小山投手コーチが「球の速さは天性のものがある。球が速い投手は他球団に比べると多くないので、どこかで役割が見つかれば」と評価するなど、ネット裏にいた首脳陣たちも目を見張っていた。
残り2つの支配下枠をめぐって育成16選手(投手9、捕手1、内野手3、外野手3)が火花を散らす現状にあって、石井監督は「育成の人にも頑張れば支配下に上がれるってことは見せてあげたいので、育成の選手も使いたいなと思います」とチャンスを与える方針。12日の阪神戦に登板する小峯は「競争は覚悟して1年目からやってきている。心の準備はできています」と泰然自若の精神で臨む。千載一遇のチャンスをものにする。
(長井 毅)
◆小峯 新陸(こみね・しんり)2001年12月1日、鹿児島市生まれ。20歳。鹿児島城西高では県4回戦が最高成績。19年育成ドラフト2位で楽天入団。昨季は2軍で9試合に登板し、1勝1敗、防御率4.82。右投左打。189センチ、90キロ。
〇…1軍キャンプに参加している育成は小峯の他に、台湾出身の左腕・王彦程(ワン・イェンチェン)投手(20)、野手では今季から登録名を山崎真彰から変更したマーキ内野手(26)がいる。いずれも3年目ということもあり、チャンスを多く与えられそうだ。140番を背負うマーキは「最後の年だと思っている。今年駄目だったら引退という気持ちでやっています」と強い決意を口にした。