◆北京五輪 ▽スノーボード男子ハーフパイプ決勝(11日、雲頂スノーパーク)
スノーボード男子ハーフパイプ(HP)決勝で、14年ソチ、18年平昌2大会連続銀メダルの平野歩夢(TOKIOインカラミ)が、96・00点で初の金メダルに輝いた。3回目で逆転した。スノーボードでは、全種目を通じて日本勢初の金メダル。3大会連続の表彰台は、計り知れない価値ある頂点になった。日本選手が冬季五輪で3大会連続でメダルを獲得するのは初めて。2回目で前世界選手権王者のスコット・ジェームズ(オーストラリア)が92・50点、平野歩は91・75点をたたき出し、平野歩は2回目を終えて2位で3回目に挑み、最後に逆転した。
決勝では、予選で封印した「トリプルコーク1440(軸を斜めにした縦3回転、横4回転技)」を1回目から組み込んだ。昨年12月に世界で初めて成功させた超高難度技を、五輪の大舞台でも初めて成功させた。スケートボードに参戦した東京五輪から、準備期間は半年間。それでも「自分にとっては大きなチャレンジ。半年しかない中でみんなを上回りたい。実現したら面白い」と燃えていた。
平昌で敗れたショーン・ホワイト(米国)、世界選手権3連覇のスコット・ジェームズ(オーストラリア)、直近の21年世界選手権王者の戸塚優斗(20)=ヨネックス=らトップクラスが順当に顔をそろえた。ホワイトは、今大会限りでの引退を表明して臨んだ。平野歩は「彼は今回最後の五輪なので、やりあえるのを楽しみにしている」と、ひときわ意識していた五輪王者のレジェンドも、ねじ伏せた。駆け上がる頂点への道は誰にも阻めなかった。予選は首位突破。さらに日本勢は平野流佳(19)=太成学院大=、戸塚、歩夢の弟・海祝(かいしゅう、19)=日大=の全員が決勝に臨んでいた。
「海祝が上がってくるのを、待ち望んでいた部分がある」。弟と初の五輪。家族が間近にいることは、実は心の安定以上にプラス面も大きい。「何でも言い合える関係。競技の上でも自分を客観的に見られない時、身近な存在からの発言はヒントになる」と歩夢は明かす。技の細やかな感覚調整が鍵になる競技。海祝も「言葉というより、近くで練習を見ている刺激の方が大きかった。スケボーの五輪もあって色々経験していて、他の人と一段違った迫力を感じる」と実感を込めた。刺激し合う最高の相乗効果が技の精度、そして予選首位突破を支え、悲願を成就させた。
昨夏の東京五輪にスケートボードで出場した。日本男子では、青戸慎司氏(陸上短距離、ボブスレー)に続く史上2人目の五輪夏冬“二刀流”。「乗っているものも、季節も、会う人も、滑る場所も、全てが違う。同じ五輪でも、全然別物の世界観。細かくいうとキリがないくらい、全てが違う」。異種目に身を置く環境そのものが、成長の糧だった。
同じ横乗りのスケートボードは、足を固定せず、バランス感覚もスノボとは異なる。「似ているようで、全然違っている部分もある」。東京から北京まで。半年で雪上の感覚を取り戻す、未知の挑戦。「大きなチャレンジ。半年しかない中でみんなを上回りたい。実現したら面白い」と話した通り、結果で成功を示してみせた。
◆平野歩夢(ひらの・あゆむ)1998年11月29日、新潟・村上市生まれ。23歳。4歳の時、3つ年上の兄・英樹(えいじゅ)さんの影響でスケートボードを始め、その半年後からスノーボードを始めた。2014年ソチ、18年平昌五輪のスノーボードHPで2大会連続の銀メダル。新潟・開志国際高を卒業後、日大スポーツ科学部競技スポーツ学科に進学。東京五輪はスケートボード・パーク予選14位で敗退。165センチ、50キロ。