新人記者に雪山の洗礼、行き着いた先には一生忘れられない経験が待っていた!

スポーツ報知
必死に雪山を登った筆者

 2021年の4月に入社してから10か月。私は今、北海道に住んでいる。昨年12月に東京本社から転任となった。これまで一度も訪れたことのなかった街で、未知の生活がスタート。もう、とにかく寒い。氷点下10度の中で生活した経験は、当然なかった。道民いわく「今年は特にやばい」そう。耳が急激に冷えるとひどい頭痛が襲ってくることを知り、大雪の影響で1週間に2度も自分の乗る飛行機が欠航したこともあった。真冬の北海道の洗礼を浴びている。

 転任から2か月。すでに一生忘れられない経験を何度もしている。なかでも、強烈にインパクトに残った取材がある。1月に行われたモーグル競技会だ。小学1年生から12年間、取りつかれたように野球に夢中になった私にとって、人生初となるモーグルだった。

 雪が舞う大会当日。現場に到着してすぐ、関係者から説明を受けた。「競技場はこの上ですね。歩いて片道30分ぐらい」。見上げた先には雪山。想定外だった。上から大人や子どもがスキーとスノーボードで軽快に滑り降りてくるなか、リュックとカメラの入ったかばんを持った男の“登山”が始まった。吹雪の雪山を逆走し、急斜面を必死に登る。転任直後に奮発して購入した2万5000円の冬用ハイカットブーツも、雪山の前では、なすすべ無し。一歩踏み出すごとに足は膝下まで埋まり、気付いた時には髪の毛も凍っていた。

 なんとか登頂に成功し、目の当たりにしたモーグルの迫力は圧巻だった。限界まで攻めてスピードを追求しつつ華麗に宙を舞う選手たちの姿に、一気に引き込まれた。

 男子A級で表彰台に上がった島川拓也選手=日本仮設=は北海道出身。取材対象だった。あいさつをして早々に、モーグル取材が初めてだと伝えた。「素人が来たのか・・・」と嫌な顔をされても仕方ない、と思いつつも、正直に話した。すると「あ、そうなんですね!わざわざ取材に来てくださってありがとうございます」と笑顔で話を続けてくれた。技術面の話題になった時は「今日はななめの軸ずらしで、3回転と2回転を決めました。コーク10とコーク7という名前の技で」と少しでもわかりやすく伝わるようにと説明。島川選手の思いやりだった。

 取材を進めると、私と同学年であることがわかり「僕も社会人1年目で、大変さとかわかりますし、こうやって会えてすごくうれしいです。一緒に頑張りましょうね。ここ(の山)、寒さやばいですけど大丈夫ですか?」。優しく気遣ってくれた。ナショナルチームでスウェーデン合宿に行くほどの実力者だが、常に謙虚に、ほがらかに受け答えする彼の姿は、同学年とは思えなかった。

 今後の目標を問うと「次の五輪を目指します」と力強く口にした。まっすぐな目と覚悟のにじむ言葉の数々に夢中になり、気付いた時には寒さも忘れていた。

 30分以上かかる“下山”の最中も、心はまだあたたかかった。体を張って動いた分だけ、出会いもある―。この経験が、教えてくれたことなのかもしれない。最前線でアスリートを追いかけることができ、仕事を通じて本気で競技に懸ける、アツい選手たちに出会うことができる。記者としての醍醐味(だいごみ)を感じた瞬間だった。

 新たな挑戦、環境の変化には必ずストレスもつきまとう。それでも「この経験ができる人は一体何人いるのだろう」。そう思うと、この瞬間がかけがえのないものだと気付く。

 これからもきっと、北の大地の洗礼を浴びるだろう。耳当てをしながら、ここでしかできない経験と新たな出会い、苦労までをも楽しめる、そんな自分でいたい。(北海道支局・堀内 啓太)

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