「攻めた結果」高梨沙羅失格のジャンプ混合団体…記者が張家口で目の当たりにしたものは間違いなく尊かった

スポーツ報知
高梨沙羅(ロイター)

 北京五輪スキージャンプ混合団体を現地取材した。高梨沙羅が1回目にスーツの規定違反で得点無効となり、日本は4位だった。失格を知り、崩れ落ちる沙羅。2回目、K点越え98・5メートルを飛んだ後、頭を下げて涙を流す沙羅。アンカーの小林陵侑がヒルサイズ106メートルを飛んだのを見届け、崩れ落ちてむせび泣く沙羅。記者は中立でないといけないが、私も同じ日本人として涙なしに見ていられなかった。一夜明けて少し落ち着き、思うところを書いておきたい。

 スーツのゆとりは、女子の場合、体から2~4センチの範囲と定められている。モモンガやムササビを想像して欲しい。スーツのゆとりが大きいほど、滑空性が高まるので、ルールで規制されている。スーツの規定は本当に細かく、縫いしろの幅が1センチ以内、など、各部位に細かく決まりがある。規定内で、最大限の性能を引き出すことは各国の戦略。従って、選手の微妙な体型変化や気候の影響で、失格になるケースは出てくる。日本代表の鷲沢徹コーチは今回の経緯を「攻めた結果」という言葉に込め「全く本人(沙羅)のせいではない」と、強調するように2度、繰り返した。

 では、日本は攻めないとメダルが取れなかったのか。今大会の勢力図を分析すると、女子に個人戦のメダリスト2人を擁するスロベニアが頭一つ抜けた優勝候補本命の位置づけだった。2位以下は混戦。日本、オーストリア、ドイツが銀メダルを争い、ノルウェーが表彰台をうかがう、といった構図。沙羅も試合前「各チーム、男子が強かったり女子が強かったり、違っていて何が起こるか分からない」と語っていた。結果的に、このメダル争いを繰り広げた4チーム全てに失格者が出た。「攻めた結果」に理由を見出すのは、あながち間違っていないと思う。

 「攻めた結果」。ふと真夏の出来事を思い出した。東京五輪陸上男子400メートルリレー決勝。私はあの場にもいた。優勝候補だった日本は、第1走者の多田と第2走者の山県の区間でバトンがつながらず、途中棄権に終わった。バトンパスでは、各走者が走り出す目安の粘着テープを走路に貼り、前走者が通過したのを見計らって走り出す。この距離は、各選手が自分の足の長さ(足長)で何足分、と予め決めておく。足長を伸ばせば互いが十分にスピードに乗った状態で渡すため、リスクがある一方でタイムの短縮が期待できる。今回、多田と山県の間は予選→決勝で0・7足分、長さにして約20センチ伸ばした。その結果、つながらなかった。

 今回、沙羅のスーツは、両太ももが2センチ、規定よりも大きかったため、失格となった。見た目に分からないほどの長さにこだわり抜いて、選手たちは五輪の頂点を目指している。4年に一度。もし失敗すれば、4年後しかチャンスは巡ってこないのに―。「五輪は、人々の熱量で作り上げられている」。沙羅の言葉である。新種目で、表彰台には立てなかった。ただ、4人が支え合って世界で4位に入った。困難に屈しなかった“日の丸飛行隊”が示せた物も、必ずあったはずだ。

 多分に自戒を込めて言うが、五輪のメダルは尺度になりがちだ。メダリストの称号は、疑いなく栄誉であり、貴重なもの。では、3位(銅メダル)と4位の何が違うのか。そんなに、差があるか。自分自身に問いかけると、ふと言葉に詰まってしまう。ただ一つ言えるのは、4位に限らず、選手が出した全ての順位には物語があり、ストーリーが詰まっている。時に、それはメダリストをも上回る熱量と思いがこもっている。私が2月7日の夜、張家口で目の当たりにしたものは、間違いなく尊かった。(記者コラム・細野 友司)

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