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羽生結弦は「やるって決めたらやりきっちゃう、それが彼のすごさ」無良崇人さんが語るストーリー〈4〉

スポーツ報知
メダルを手に笑顔の羽生結弦(左)と無良崇人

 無良崇人さん(30)は7年前に羽生結弦(27)=ANA=と一緒にクワッドアクセルにトライしている。2015年6月のアイスショー「ドリーム・オン・アイス」のフィナーレ。体の動きがいい時に軽く練習していた時期だった。

 無良「人前でやったら頑張っていいところまでいきそうじゃない? やるんだったらやる?」

 羽生「無良くんがやるんだったらやります」

 先に無良さんが試み、続いて羽生も挑んだ。「結果、2人とも全然回らなかった(笑い)」のだが、会場に特段のどよめきや歓声は起こらなかったという。「あの頃は見ているお客さんは4回転アクセルだと思っていないと思うんです。そういう時代でしたから」。当時は夢の世界に存在した大技の成功を、羽生は今かなえようとしている。

 4学年下の羽生の存在を知ったのは、仙台に練習で行った時だった。「彼はまだ小学生でした。いくら転んでも、ずっとひたむきに練習している印象が強かったです」。その後、存在感は増すばかりだった。無良さんが優勝した07年11月の全日本ジュニアで、12歳の羽生が3位に入った。1つ下のカテゴリーのノービス選手として初の表彰台の快挙に「すごい選手が出てきたなって思いました」。

 無良さんが4回転について助言したことがある。11年5月の東日本大震災のチャリティーアイスショー。「サルコーを練習しているんです。ちょっと見ててもらっていいですか?」と相談を受けた。「今と違って当時は力いっぱい跳ぶタイプ。跳ぼうとして軸が左に外れる感じ。上半身をもう少し残す感じで跳んだら? というようなことを言った気がします」。すると羽生は1発目で着氷。「なんじゃこれ」と、おののいた。

 悩んでいる時にはアドバイスをくれた。15年4月の国別対抗戦の練習でのことだった。「サルコー、分からないんだよね。どういうイメージで体を動かしている?」と尋ねたところ、羽生は紙とペンを持ち出し、図解してくれた。「左足がどう進んでいけばいいのか、腕の位置はこうしてというふうに図に描いてくれて。後ろに滑っていく動きをどう邪魔せずにジャンプにもっていくのかを分かりやすく説明してくれました」

 実際の動きと理想の動きをリンクさせることに対して「引き出しが多いし、探し出すのが早い。そういうところが4回転アクセルにもつながっているのでは」

 4回転半を練習したことがある無良さんには、その難しさが分かる。「途方もなく空中が長く感じるんですよ」。踏み込んで上がった瞬間から降りるまでのリズムは、通常の4回転は「フッ、パッ」のイメージ。4回転半になると「フッ、ッ、パッ」。「最後にもうひと伸びしないといけないのが難しさ」だという。「中途半端なところで転ぶと意図しない方向に倒れる。その恐怖心を拭うのも大変」

 羽生のことを語る間、無良さんは何度も「ずば抜けた探究心」という言葉を口にした。「やるって決めたら、やりきっちゃうところ。それが彼のすごさ」。到達するための強い意志と、そこにささげる無限の努力。羽生にだから期待する。「今、彼がやりたいことはアクセルを跳ぶこと。全日本であそこまできていた。五輪という舞台でユヅが降りる姿を見たいなとすごく思います」(高木 恵)=おわり=

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