阿炎に届いた千羽鶴 85歳の女性ファンが見た、確かな土俵上の姿「一生懸命が、好きなんです」

スポーツ報知
85歳女性から阿炎に届いた千羽鶴と応援の手紙(関係者提供)

 大相撲の幕内・阿炎(錣山)が、初場所で12勝を挙げて殊勲賞を獲得した。14日目には、横綱・照ノ富士から金星。千秋楽まで優勝争いを演じ、本場所を盛り上げる一役を担った。再入幕した昨年11月場所から、2場所連続の12勝。昨春に、協会の定める新型コロナウイルス感染防止のためのガイドライン違反による出場停止処分から幕下で復帰以降、一皮むけた姿を見せ続けている。

 昨年12月中旬、「阿炎政虎後援会」に一通の手紙と千羽鶴が届いた。送り主は、石川県に住む85歳の女性。色鮮やかな千羽鶴に添えられた手紙には、「11月場所、すばらしかったですね。毎日テレビの前でおうえんしていました。85才のおばあさんです。御祝いに千羽鶴を折りながら見ていましたが、なかなか折れずにやっと出来上がりました。これからもけが、体に気を付けてがんばって下さい。一月場所もがんばって」と、書かれていた。

 返り入幕の九州は、敢闘賞を獲得する活躍。14日目の照ノ富士との直接対決に敗れて初優勝の夢は散ったが、持ち前の突き押しに磨をかけた相撲でファンを魅了した。女性は、以前から阿炎を応援していたという。「(処分を受けて)番付の下の方にいたのに、ずっと勝っていて、すごいなと。(今の阿炎は)別に愛想もないんだけど…(笑い)。ツンとしているところがいいかな、と思って」と、思いを明かした。

 千羽鶴は、15日間をかけて折った。その思いを受け取った阿炎は、お礼とともに、千羽鶴と一緒に写った自身の写真を女性に贈った。初場所でも見せた雄姿に、女性は「千羽鶴のおかげかなと思っているんです」と、自らのことのように喜んでいた。

 なぜ、阿炎を応援するのか―。女性は「一生懸命が、好きなんです」と明かした。テレビ自体は、それほど見ることもないという。その中で「相撲と高校野球、それと箱根駅伝。それだけは見るんです」。阿炎自身、処分から復帰後、繰り返すのは「土俵で一生懸命相撲を取ることで、(周囲への)恩返しにつながる」という言葉。一時は本気で現役引退も覚悟し、再び立たせてもらった土俵。相撲を取る喜びと責任感に、ウソはないと言い切れる。

 ガイドライン違反で、20年秋場所から3場所出場停止という重い処分。以前に問題視された言動なども、重なっていた。相撲協会をはじめ、部屋や家族、関係者にはたくさんの迷惑をかけた。ただそれでも、反省の時を経て、一人の大相撲ファンの人生の活力となる力士として、幕内の土俵に戻ってきた。

 スポーツ選手というのは、他人の人生に光を与えることができる存在だろう。だが皆が皆、ではない。一生懸命競技に取り組むアスリートの姿にこそ、人は心打たれると思う。過去に起こした不祥事を消すことは、当然できない。それでも改心し、相撲に真摯(しんし)に向き合うことでまた、応援してもらえる存在となる。阿炎が、そう教えてくれたと感じる。(記者コラム・大谷 翔太)

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