◆テニス 全豪オープン第11日 ▽車いすの部 男子シングルス決勝 国枝慎吾2(7―5、3―6、6―2)1アルフィー・ヒューエット(27日・メルボルン)
21年東京パラリンピック金メダルの国枝慎吾(ユニクロ)が2年ぶり11度目、4大大会通算26度目の優勝を飾った。決勝で第2シードのライバル、アルフィー・ヒューエット(英国)をフルセットの末に下した。5度目のマッチポイントで相手のロブがアウトになると、両手を突き上げた。ヒッティングパートナー、メンタルトレーナー、そして今回久しぶりに帯同した妻・愛さんと喜びを分かち合った。
最終セット、2―1から3ゲーム連取で一気に突き放した。「(第6ゲームで)2本、バックのダウンザラインを打って、きれいに決まったのは練習でもない。どうプレーしたのか覚えていない。ゾーンに入っていたと思う」というほどの集中力を発揮した。
開催決定時から大きな目標としてきた昨夏の東京パラリンピックを金メダルという最高の形で終え、モチベーション維持に苦しんでいる。パラリンピック直後に臨んだ全米オープン優勝後はオフを取り、「コーヒーとパンを持って、自宅近くの池で水を眺めたり」する時間を過ごし、2か月はラケットを握らなかった。
休めば世界ランキングが下がり、8人のみの4大大会出場を逃す可能性があり、容易に休養は取れない。前哨戦2大会を経て迎えた今大会も、どこか気持ちは盛り上がらない。決勝にも「昨日もテニス辞めようかなと思った時もあったし、試合前、もしかしたら最後の試合になるのかな、と思いながらやったところもある」と、どこかモヤモヤした部分があった。
それでもコートに入れば「いいテニスを見せる、テニスをより表現するんだ」という第一人者らしい思いと、試合に負けたくない気持ちが体を動かした。今後のスケジュールは明言せず「ウィンブルドンのタイトルは残っているけど」と、4大大会で唯一シングルス優勝がないウィンブルドン選手権(6月27日開幕・ロンドン)への思いは口にしていた。