第94回センバツ高校野球大会(3月18日開幕、甲子園)の出場32校を決める選考委員会は28日に開かれる。昨秋に東北大会準優勝を果たした聖光学院(福島)は、2018年以来となる4年ぶり6度目出場がほぼ確実。佐山未来投手(2年)がエースの自覚と父への思いを胸に、聖地での力投へ意欲を燃やしている。
仲間のため、父のため、甲子園で力投する。出場をほぼ確実としながら28日の発表を控える佐山は、「まだ出場が決まったわけじゃないので不安もありますけど、選ばれたら持ち味の粘りの投球でチームを勝たせたい」と意気込んでいる。
1年秋から公式戦を経験し、140キロの直球に8種類の変化球を操るエースに成長した。昨秋は福島大会と東北大会で計63回を投げ防御率1・00。佐山と山浅龍之介捕手(2年)のバッテリーを中心とした堅守で東北準Vを果たした。佐山は低めへの変化球の精度が自信になった一方、直球で勝負しきれない課題も見えた。今冬は球速アップとキレの向上を目指し、上半身と下半身をバランス良く強化。「春は142、3キロを出すことが目標。緩急を使った投球で真っすぐを生かしたい」とセンバツを見据える。
甲子園で活躍する姿を見せたい人がいる。父・正和さん(43)が栃木・宇都宮学園(現文星芸大付)で2年夏に甲子園出場。子どもの頃から、父に「甲子園は見に行くところじゃなく、自分で行くところ」と言われ続けてきた。東京神宮リトルシニアで中学3年春に関西開催の全国大会に出場した際、チームはセンバツを観戦する予定があったが、「自分で行く思いがあるので、僕は行けません」と監督に話して父の教えを貫いた。センバツ出場を当確とした東北大会準決勝を球場で見届けた正和さんの目には涙。父の前で晴れ姿を見せる瞬間を、「楽しみです」と心待ちにしている。
聖光学院としては春夏通じて甲子園8強が最高。16年夏の北海(南北海道)との準々決勝では、初回に3点を先制したが4回に逆転され、その後も追加点を許し3―7で敗退。「準々決勝はいつも突き放されてきた。(準々決勝突破の)壁を越えるためには11―10くらいのスコアを勝ちきる底力が必要」と斎藤智也監督(58)は話し、投手陣には1失点でも減らす努力、野手陣には1得点を積み上げる力を求めてきた。
指揮官から「ピンチをエネルギーに変えて勝負をかけられる」と期待される佐山は、「自分と山浅が崩れたらチームは終わる、それくらいの覚悟でこれからも練習していく」。決して浮き足立つことなく、吉報を待つ。(小山内 彩希)
◆佐山 未来(さやま・みらい)2004年8月5日、栃木・小山市生まれ。17歳。大谷南小1年時に大南学童で野球を始め、6年時は東京ヤクルトスワローズジュニア選出。大谷中では東京神宮リトルシニアでプレー。聖光学院では2年秋からエース。174センチ、74キロ。右投右打。家族は両親と弟。
〇…正捕手で主軸も担う山浅が攻守で佐山を助ける。強肩で視野も広く、東北大会は許盗塁0。2年春からスタメンマスクをかぶる経験も生かし、昨秋は佐山を巧みにリードするも、「打撃で助けることはできなかった」。今秋2割6分3厘の打率を悔やんだ。甲子園で戦うことを見据え、今冬に体重移動の仕方を見直して打球に威力が増した。斎藤監督の目にも、「捉えたときの音が違う」と成長し続ける姿が映っている。