今季からJ2モンテディオ山形のコーチに就任した渡辺晋氏(48)がこのほど、スポーツ報知の取材に応じた。同コーチは2014年途中から19年までの6季にわたり、J1仙台の監督を務めた。山形でコーチを引き受けた理由や、選手時代も含めると計19年も在籍した古巣・仙台との「みちのくダービー」への思いなどを聞いた。(取材・構成=高橋宏磁)
―今季、J2山形のコーチ就任を選んだ理由は?
「いろんなチームから打診のようなものはありましたが、いち早く正式にオファーをくれたのが山形さんでした。オファーに到る前にも強化の方と話をさせてもらったり、監督のピーター(クラモフスキー)さんともリモートで話をさせてもらった。現場からも強化からも必要とされていると感じたのが決断の理由です」
―監督という職業にこだわりはなかったのか?
「監督という役職にとらわれずに一人の指導者として、選手に近いところでやりたいという思いがあった。監督にも、カテゴリーにもこだわりはなかった。とにかく目の前の選手にたくさん関わって、もっともっと成長させる場所はないのかなとずっと考えていた。今、新鮮ですごく楽しいです。選手たちが成長していってくれることが僕自身にとって自信にもなる」
―昨年9月まではJ2山口を指揮。対戦相手として山形はどう見ていた?
「自分が(J1)仙台で監督をしていた時の経験や、山口でやれたこと、やれなかったことを整理した時、自分に足りないものを探した先にあったのが山形さんでした。単純に(山形の)練習を見に行きたいとも思っていた。それを身につけられたら、僕自身もパワーアップできるだろう、と。後は単純に対戦相手として見て感じたウィーク(弱点)をお伝えすることができれば、山形さんの力になるだろうし。自分自身のキャリアアップと、山形さんを強くすること。それがこんなに合致することがあるんだな、と思うような。もちろん、ちゃんと結果に結びつけないといけないけどね。非常に胸が躍るオファーでした」
―自身で感じた「足りないもの」とは?
ボールを自分たちで持つことを怖がらないとか、そういう戦術的な部分やマインドは、仙台で仕込めたと思う。それは山口でもしかり。そこから、どうゴールに結びつけるのか、勝ちきるのか、というものを追求した時、まだまだ足りないものがあると感じていた」
―クラモフスキー監督からはどんな話があった?
「ピーターさんに『お互いに指導者として頂点を目指しましょう』と言っていただいたのが印象的だった。(豪州出身の)ピーターさんは豪州で一番の指導者を目指す、と。『渡辺さんは日本で一番の指導者を目指してくれ』と言われました。お互いに切磋琢磨(せっさたくま)していこうと言われたのが記憶に残っています。こうやって人を巻き込む力があるんだな、と感じました」
―今季は19年間も在籍した古巣・仙台との「みちのくダービー」もある
「それはユアスタに行けばね、19年もいた場所なので。ベンチを間違えなきゃいいなとか、導線を気をつけないといけない、とかは思いますけどね(笑い)。ユアスタに行けば、そういう感情も生まれるのかもしれないけど、今は個人的には何の感情もない。1ミリもないです。ただ(山形には)みちのくダービーを戦ったことがある選手は、やま(DF山田拓巳)ぐらいしかいない。ダービーの熱さや、重要性はちょっとずつ伝えなきゃいけない役割もあるのかな、とは思います」
◆渡辺晋(わたなべ・すすむ)1973年10月10日、東京都生まれ、48歳。桐蔭学園、駒大を経て98年に札幌入り。甲府を経て2001年に仙台に入団。DFとして同年はJ2で36試合に出場。チームは2位で、東北のクラブとしては初のJ1昇格。04年に現役を引退。コーチなどを歴任し、14年春、ヘッドコーチから監督に昇格し19年までの計6季、J1で監督を務めた。昨年はJ2山口で監督を務めたが9月に自ら申し出て退任。184センチ、71キロ。