ノルディック複合で五輪2大会連続銀メダルの渡部暁斗(33)=北野建設=は、5度目の出場となる北京五輪で悲願の頂点を目指す。92年アルベールビル、94年リレハンメル大会団体金メダリストの荻原健司・長野市長(52)が、このほどスポーツ報知の単独インタビューに応じ、渡部暁へエール。豊富な経験値に期待を寄せつつ、94年大会を最後に表彰台から遠ざかる団体戦も「銅メダル獲得という、明確な目標を持ってほしい」と背中を押した。(取材=北野 新太、構成=細野 友司)
5大会連続の五輪に挑む33歳の渡部暁。14年ソチ、18年平昌大会の銀メダリストは、北京へ「金メダルへの思いが、今までで一番強い」と頂点を渇望している。昨年10月に長野市長に初当選した荻原氏は、経験と実績を積み重ねてきた第一人者に、信頼と期待を込めた。
「彼は、百戦錬磨ですから。五輪という、普段とは別の雰囲気が漂う大きなイベントで、きっと持てる力を発揮してくれると思う。自分自身の経験も踏まえると、五輪は2回目、3回目の方がよほど落ち着いて臨める。そういった、経験の差も表れるんじゃないか、という意味でも楽しみです」
今季は、W杯バルディフィエメ大会(9日、イタリア)で6位。距離で力走し、順位を上げる試合が目立つ。
「シーズンの出だしに比べれば、1月のW杯で6位に入るということは、うまく調子を合わせられているという感じもする。クロスカントリーの走力は問題ない。ジャンプを調整するのみ、と本人も思っているのではないか。北京入りするまでに疲れをとりつつ、気持ちをリセットしてくれれば問題ないと思っています」
平昌の頃から「2位はもう見飽きた」と何度も口にした。近いようで遠い、未到の頂。五輪2連覇の荻原氏が思う金メダルの鍵は―。
「金メダルは最大の目標だと思うけど、結果的に金メダルが取れればいいのであって、成すべきは『やるべきこと』です。経験上、アドバイスをするなら、『やるべきこと』を1つ、多くても2つに絞ることですね。例えば細かいですけど、ジャンプの助走でのクローチング(前傾姿勢)とか。1つか2つに整理して、その部分に集中して戦ってほしいと思います」
荻原氏は、渡部暁に並び日本勢歴代最多のW杯通算19勝をマーク。ジャンプでは、当時はまだ珍しかったV字の飛型をいち早く習得。前半飛躍で大きくリードを奪い、後半距離で逃げ切るのが必勝パターンだった。
「私は前半ジャンプが良くて、後半逃げ切る形で勝つことが多かったけど、実は自分の中ではクロスカントリーの方が得意というか。どちらかというと、ジャンプの方に苦手意識があったんですよ。ノルディック複合の面白さは、クロスカントリーが終わるまで何があるか分からない。後半、自分次第で頑張れる。希望があるということでしょうね」
日本勢は、24歳の山本涼太(長野日野自動車)が台頭した。暁斗の弟・善斗(30)=北野建設=も飛躍が強力。荻原氏らが制した94年リレハンメル大会以来、28年ぶりとなる団体戦の表彰台も現実味を帯びている。
「ノルウェー、ドイツ、オーストリアに続く日本の立ち位置。金、銀は厳しくても、銅メダル獲得は明確に目標として持っていいと思います。我々も、金メダルという目標が明確だったから、1つにまとまれた。団体戦の結果は個人の成績の積み重ねだけど、どうやってムードを作るかは非常に重要。明るく、元気に、メダルは絶対取ろうぜ!と。渡部(暁斗)君のリーダーシップにかかっていますね」
◆荻原 健司(おぎわら・けんじ)1969年12月20日、群馬・草津町生まれ。52歳。早大―北野建設。小学5年からジャンプを始め、複合は中学から。五輪は4度出場し、92年アルベールビルと94年リレハンメル団体2連覇。98年長野大会は双子の弟・次晴氏と出場し、個人は兄弟で入賞(兄4位、弟6位)。2002年ソルトレークシティー大会後に引退。世界選手権は93、97年に個人で金、W杯通算19勝、個人総合3連覇。引退後は参院議員を1期務め、昨年10月の長野市長選に初当選。