水島新司さんが悩み抜いた還暦超えスラッガー「あぶさん」の引退…記者が明かす幻のスクープ

1面風にレイアウトされた2008年2月1日付スポーツ報知5面
1面風にレイアウトされた2008年2月1日付スポーツ報知5面
水島新司さんの主な野球漫画
水島新司さんの主な野球漫画

 「ドカベン」「あぶさん」「野球狂の詩(うた)」などの野球漫画で知られる漫画家の水島新司(みずしま・しんじ)さんが10日、肺炎のため東京都内の病院で死去した。82歳だった。1970年代から半世紀にわたって国民的野球漫画の数々を描き続けたが、2020年に引退し、闘病していた。生前にインタビュー取材したことのある酒井隆之デジタル編集部長が悼んだ。

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 水島先生に懇願して「あぶさん、引退」と書かせていただいたのは、08年のキャンプインだった。プロ野球開幕に向けての話を聞かせてと依頼したインタビューでのこと。「ビッグコミック・オリジナル」(小学館)で長期連載中だった「あぶさん」の主人公、ソフトバンク・景浦安武外野手は当時、61歳になっていた。

 72年、南海の選手兼監督だった野村克也氏と水島先生の口約束で入団(連載開始)して以来、王貞治監督時代までホークス一筋36年。「もう、ゆっくり飲ませてあげては」と聞くと「実は、昨年の開幕から『今年で終わろうか』と考えてました。今年はもう1年やる。王さんへのお礼奉公ですよ」と「今季限りの引退」を表明してくれた。

 スポーツ紙は後追いしなかったが、小学館が一般紙に「あぶさん、引退!?」という広告を打った。シーズン終盤に王監督が勇退を発表し、お膳立てはそろったが、まだまだ現役で売りたい出版社の意向は強く、結局、もう1年、現役を続けることに。誤報になったことを気遣い、お酒を飲まない水島先生が会食に誘ってくれた。「記者として漫画に出てもらおうかな」というリップサービスまで。

 同年10月20日発売号では、景浦が監督室を訪れ「私も今年限りで、現役を辞めます」と表明するシーンが描かれた。「今年1年間はチームへのお礼奉公だったということと監督が辞められるということで、ここが潮時と感じ、引退しようと考えたんです」とのセリフ。これはまさに私のインタビューで水島先生が語ってくれた言葉だった。その後、景浦は王さんに慰留されるのだが、「引退表明」は「当たり」にしてくれた。登録名「あぶさん」でマスターズリーグに選手として出場したこともある水島先生。書いた記者への気遣いも、“プロ野球選手”そのものだった。(酒井 隆之)

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