【記者の目】地に落ちた日本バレーボール協会の信頼…診断書偽造問題で会長の嶋岡健治氏が解職

スポーツ報知
嶋岡健治氏

 日本バレーボール協会の嶋岡健治会長が13日、ビーチバレーの国際大会で診断書の偽造があった問題で、理事会に解職された。72年ミュンヘン五輪では「プリンス」と呼ばれ、金メダルを獲得。その華麗なプレーでファンを魅了、会長としてのかじ取りに期待が高まった。結果的には偽造隠蔽で辞めることになったが、就任した17年から、これといった実績を上げることもなく、退場することになった。理事会後のオンライン会見も姿を見せなかった。

 昨年の東京五輪では、バレー、ビーチバレー男女4種目でメダルはゼロ。男子バレーのベスト8入りが最高で、女子バレー、男女ビーチはいずれも1次リーグ敗退。当初から苦戦は予想されていたが、他競技のメダルラッシュに比べると、存在感は全くなかった。地元での五輪で、日本代表に注力しなければならないはずが、ビーチでは逆に、選手の足を引っ張る結果になった。女子バレーでは、長期間、強化委員長不在の事態に陥ったこともあった。この結果から、引責辞任すべきだった。

 嶋岡氏は、日本協会会長就任時は、日本バレーボールリーグ機構(Vリーグ)会長を兼務していた。日本代表に選手を送り出すリーグを統括するわけだから、リーグの活性化は欠かせなかった。「世界一のリーグにしたい」と意気込んでいたものの、昨年4月に突然、同会長を退任。会見で「日本協会会長として東京五輪に注力したい」と話したが、Vリーグ関係者からは「無責任」「投げ出しだ」と批判の声が上がった。チーム関係者には「プロ化するから」と声をかけていたが、反対するチームを説得することはできなかった。

 故松平康隆会長はリーグのプロ化を目指していた93年、サッカー(Jリーグ)に先を越され、「女子のプロ化」を他競技に先んじてどうにか実現しようと、動いたがかなわなかった。この数年、男子バスケットボールがBリーグとして華々しくプロ化に動いたり、卓球が新リーグのTリーグを創設したり、24年にはハンドボールがプロリーグをスタートさせるなど、東京五輪をはさみ、他競技はにぎやかだ。その一方、バレーは話題にものぼらない。かつては先頭を走っていたのが、いつの間にか最後方だ。

 「全チームの意向を聞いていたら、プロ化なんて無理に決まっています。嶋岡さんには、どうしてもやるんだ、という迫力が欠けていた。(スポーツ専門配信チャンネルの)DAZNの放送もなくなり、収入も大幅減となった。この先が心配です」とプロ化に賛成していたVリーグ関係者も、失望した様子だった。

 日本での国際大会開催も暗い見通しになっている。グラチャンが廃止となり、世界選手権もこの数大会、男女もしくは、女子のみを行ってきたが、22年大会の開催権は獲得できなかった。「協会としては収入の大きな柱となるべき大会が開けなくなってきている。国際連盟(FIVB)はバレー人気の高い日本に期待してきたが、今はもうそんなことはない。以前はFIVBとつながりを持つ人が必ずいたが、今はパイプは全くないに等しい」と放送関係者。

 東京五輪・パラリンピック組織委員会副会長を務めた荒木田裕子氏は、FIVBはもちろん、国際オリンピック委員会とも交渉のできる日本でも数少ない人材だ。その荒木田氏を、嶋岡氏は19年の改選時に日本協会理事から外した。「監督問題など嶋岡さんにとって、耳に痛いことでも意見を言える数少ない理事でした。だが、そういう人を嫌がるのが嶋岡さん。結果的にFIVBとの交渉もうまくいかなくなった」と元理事。

 元協会関係者は「結局、嶋岡さんは何をやりたかったのか、よく分からない。東京五輪開催時に会長でいたかったのでは、と言う人がいるけど、そうかも知れないなと思うことがありますよ」と話した。また、「嶋岡さんが会長だった5年間は、バレー界の失われた5年間になった。Vリーグ会長もやっていたから、もっと長いかも」と、元協会関係者は嘆いた。

 遅きに失した辞任。嶋岡会長の罪は大きい。“負債”を取り戻すには、大変なエネルギーが必要だ。

                                          (久浦 真一)

スポーツ

NEWS読売・報知 モバイルGIANTS 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真 法人向け紙面・写真使用申請