日本バレーボール協会が13日に理事会を開く。ビーチバレーの国際大会で診断書の偽造があった問題で、関係した約10人の処分を決めることになるが、それとは別に今後の理事会をどう運営していくかが、大きな焦点となる。
ビーチバレーについては、20年1月の男子ワールドツアーで参加予定ペアがキャンセルの旨を伝えたが、日本協会が期限内に申請せず、国際連盟からのペナルティーを逃れるために診断書が偽造された。12月の臨時理事会後の会見では、選手のエントリー申請を行っていた職員が出向で不在となり、後任を探したが見つからず、英語のできるアルバイトに任せることになったことも新たに分かった。あきれてものもいえない。選手の人生をどう考えているのか。
協会は、アスリートファーストが、全く頭の中にないと思われても仕方がない。嶋岡健治会長は12月の臨時理事会で辞意を示したが、少なくとも関わった理事の辞任は不可避だろう。今後は、副会長が会長代行となり、会長を含めて新理事会の人選を進めていくことになる。だが、今回はゼロからやり直した方がいいのではないか。
昨年6月、改選で新理事20人が選ばれたが、その選考課程で嶋岡会長が大きく関わっていたからだ。まず、理事候補約20人の候補を選ぶ役員候補者選考委員会を行うが、その一員に嶋岡会長が含まれていた。複数の元理事は「当事者が入って選考を行うのはおかしい」と指摘していた。
さらに、その理事候補者を、評議員会で選任するのだが、「20人の候補者での選任では、ほぼ全員を承認する形になるから、20人を超える人数を出してもらい、評議員会で20人を選ぶ形にしたい」との要望があったにも関わらず、嶋岡会長は理事会で理事候補23人をわざわざ20人に絞り評議員会に提出した。「削られた3人が入ると、自分にいろいろ意見する人が入り、協会の運営がやりにくくなる。それを嫌ったと思われます。理事の中には、自分より外れた3人が入った方が協会のためになる、と話す人もいました」(元理事)
19年の理事改選時も、似たようなことは起きていた。「当然続けて選ばれるだろうと思ってた人が入らなかった。理事会で会長にとって耳の痛い意見を言う人たちだった。だから、選考委員会で会長の意向が反映されたように感じた」と元協会関係者。
さらに、嶋岡体制になって以来、理事会では活発な議論が年々なくなっていることだ。いや、あえ避けていると言った方が正しいかもしれない。理事会で配られる資料が膨大にも関わらず、その場で賛否を問うことが何度かあったという。出席した理事は限られた時間内では資料を読みこむことができず、賛否を表明させられ、十分な議論を行えなかった。
理事会は以前、マスコミにも公開されていた。だが、このところ、非公開となった。公開を要求しても、嶋岡会長は「マスコミの皆さんの前では、意見を言えない理事がいるから」とかたくなに、拒んできた。元理事は「意見が飛び交うなどほとんどなかった。1回も発言しない方もけっこういた」と振り返る。ある関係者は「バレー協会理事という肩書きが欲しいだけの人も見受けられた。そんな人に活発な議論など期待できない」。
ビーチバレーのエントリーミスは最終的には、協会幹部の隠蔽につながり、深刻な事態に陥った。「東京五輪でバレーは成果を上げることができなかった。国際大会の日本開催が減るなど未来への展望も見えない危機的状況だ。本当にバレー界のことを真剣に考えてくれる方が理事になってくれないと、終わってしまう」とある協会関係者は悲痛な声を上げる。別の関係者は「コンプライアンス上、外部の識者らを理事に入れる必要があるのは分かるが、今はバレーのことをよく理解している方が入ってもらわないと、この苦境は打開できない」と話した。
64年東京五輪では、女子が金メダルを獲得し、“東洋の魔女”は国民的なヒロインとなった。その頂点から、昨年の東京五輪では全く存在感を発揮できなかった。その責任の多くは17年からの嶋岡会長体制にある。今こそ、理事会を根本から立て直すべきだ。(久浦 真一)