泣くな、清宮海斗…1・8新日対抗戦でのオカダ・カズチカの罵倒「帰れ!」から始まる「ノアの未来」

スポーツ報知
8日の新日VSノア対抗戦でオカダ・カズチカに高さ抜群のドロップキックを見舞った清宮海斗(カメラ・森田 俊弥)

 これほど泣きじゃくり続けるレスラーを初めて見た。それが素直な感想だった。

 8日、横浜アリーナで行われた新日本プロレスとプロレスリング・ノアの対抗戦。Wメインイベントのタッグマッチで新日出身のレジェンド・武藤敬司(59)と組んで、新日のオカダ・カズチカ(34)、棚橋弘至(45)というエースタッグと対峙(たいじ)したのが、「ノアの未来」と期待を集める清宮海斗(25)だった。

 20、30、40、50代という各年代のスターたちが顔を合わせた黄金カードでひときわ若さが際だったのが、清宮。リング上で向き合った4人を見た瞬間、私の記憶は6万7000人の大観衆を飲み込んだ27年前の東京ドームへとフラッシュバックしていた。

 95年10月9日に行われた新日対UWFインターナショナルの全面対抗戦。メインイベントでUインターの絶対的エース・高田延彦と対戦したのが、27年後のこの日もメインのリングに立った武藤だった。

 当時、「最強」をうたい文句にゲーリー・オブライト、北尾光司、スーパー・ベイダーらと激闘を展開した高田を私は番記者のように追いかけていた。そのハイキック、関節技のキレこそプロレス界最強と信じていたが、ドームのリング上で188センチ、110キロの武藤と向かい合った183センチ、100キロ(ともに当時)の高田は明らかに小さく、細く見えた。

 それはこの日、長州力に敗れた安生洋二、橋本真也に敗れた中野龍雄らUインターの選手全員に言えたことで、明らかに体格で上回る新日の選手たちに次々と屈していくUインター戦士の姿に私は呆然とし、高田が足4の字固めというクラシックな技で武藤に敗れた瞬間、私の中での「最強」伝説は終わりを告げた。

 プロレスという格闘技において、やはり体格から来るナチュラルパワーというのは何よりも説得力を持つ―。そんなことを思い知らされた試合だった。

 そして、27年が経った。

 7077人が見守った1・8のリング。パンプアップされたオカダと棚橋、さらに59歳の武藤と並んでも、清宮は180センチ、98キロという恵まれた体格にも関わらず明らかに小さく、細く見えた。

 それでも清宮は頑張った。2年前から対戦を熱望してきたオカダと先鋒でにらみ合うと、本家顔負けの高角度ドロップキックをたたき込んで見せた。

 しかし、棚橋にテキサスクローバーホールドで絞め上げられると、オカダに場外でのDDTを食らってしまう。リング下で倒れ伏した状態になると、オカダに「調子乗ってるんじゃねえぞ。さっさと上がってこい!」と罵倒された。

 「行けよ!」と武藤に鼓舞され、リングインした清宮は「行くぞー!」と叫ぶと、コーナーからのミサイルキックをオカダにたたき込んだ。ジャーマンスープレッックスを見舞い、さらに必殺のタイガースープレックスも決めたが、最後はオカダに開脚式ツームストンパイルドライバー、必殺のレインメーカーと畳みかけられ、屈辱の3カウントを聞いた。

 試合後、リングに倒れ伏して号泣する清宮はオカダに「こんなんで泣いてんじゃねえぞ。帰れ! 邪魔だ。コノヤロー」と再度、罵倒された。引き上げる際も泣き続ける25歳に34歳年上の武藤が肩を貸し、「よくやった。よくやったよ、おまえ。頑張った!」と声をかけながらインタビュースペースへ。武藤はイスに座ったが、清宮はその隣でフロアに崩れ落ち、さらに泣き続けた。

 武藤のコメント中に泣きながら1人で控室へと去っていった、その背中に「まだ始まったばっかりだよ。まだ今からだよ、おまえ」と優しく声をかけた武藤。

 一方、汗まみれの顔でバックステージに引き上げてきたオカダは「僕が言うと、ちょっとひどいことになってしまうかもしれないので…。それぐらい(自分との)差を感じたと思いますし、あんな、泣いてる場合じゃないよって」と清宮をバッサリとたたき切った。

 「清宮選手だったけど、もう、清宮君かな。呼び捨てにもできない(低い)レベルで。本当にめちゃめちゃ悔しいと思いますよ。でも、これが実際の差。(試合前に清宮が)『新日本プロレスのお客さんを持って帰る』って言ってましたけれども、あれじゃ持って帰れないだろうと」と続けた上で「悔しいなら、新日に来ればいいしね。いいじゃん、また、ノアに戻ればいいんだから。海外修行のように、何年か(新日に)上がって、自信がつけば、またノアに戻る」とノアを新日の道場扱いした上で「いつまでもノアの中で育って、ノアでトップになれるかもしれないけど、プロレス界、外に出てみたら、海は広いなと。それぐらい、差があったと思います」と厳しく突き放した。

 オカダ自身が闘龍門から2007年に新日に移籍した当時は身長こそ191センチとずば抜けて高いものの高山善廣やノアの潮崎豪らにおもちゃのように蹂躙(じゅうりん)される試合を経て、急成長。11年に「レインメーカー」として米国から凱旋帰国して以降、新日のトップに登り詰めた経験を持つ。

 そんなトップスターからの叱咤(しった)の言葉を大舞台での敗戦後、泣きじゃくり続け、一言のコメントも発することができなかった激情家の清宮がどう聞き、自身の成長につなげていくのか。

 天性の身体能力に抜群のスター性。誰もが認める輝くような将来性を持った男は48時間後の10日、ノア横浜ラジアントホール大会での試合後、1・8での涙について「止まらないぐらい泣いたから。もう涙は出ない」と笑顔で振り返った後、「痛いほど、いろいろなことを横浜アリーナで痛感しました。自分の居場所、立場がこの間の試合で分かったから、ノアが最終的に笑えるような年に絶対します」と決意表明した。

 そう、5年ぶりの対抗戦で4勝6敗1分けの負け越しに終わった「ノアの未来」は、この25歳の反骨精神にかかっている。(記者コラム・中村 健吾)

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