青学大の原監督と駿河台大の徳本監督が箱根駅伝レース中に交わした友情メール 個性派の両監督をつなぐ故・三浦学さん

スポーツ報知
第98回箱根駅伝9区の最中に青学大の原晋監督と駿河台大の徳本一善監督が交わしたメール

 ちょうど1週間前の今頃、2022年1月3日の昼。第98回箱根駅伝9区で熱戦が繰り広げられている真っ最中に、青学大の原晋監督と駿河台大の徳本一善監督は、スマホでメールを交わしていた。

 両監督の承諾を得られたので、2人のメールを紹介したい。

 箱根駅伝初出場の駿河台大が掲げたチーム目標は「繰り上げスタートなしで1本のタスキを大手町のゴールまでつなぐ」。その目標を達成するための「ライバル」は青学大だった。

 復路の繰り上げ時間は20分。往路20位の駿河台大は往路優勝の青学大がスタートしてから10分後に一斉スタート。つまり、10区で繰り上げスタートを避けるためには、6~9区の4区間で青学大に10分以内の差で踏ん張らなければならなかった。

 6区で駿河台大の小泉謙(3年)が区間3位と好走。青学大の高橋勇輝(4年)は区間8位だった。結果的に10区間で唯一、駿河台大が青学大に勝った。

 「小泉が貯金をしてくれたお陰で、7~9区の3区間で10分以上の余裕ができた。6区が終わった時点で、繰り上げスタートなしで10区までタスキをつなげることができると思った」と徳本監督は振り返る。

 しかし、9区の終盤でピンチが訪れた。青学大の中村唯翔(3年)が区間新記録の驚異的なペースで走り、駿河台大との差がどんどん広がった。

 その時、徳本監督のスマホにメール着信音が鳴り響いた。原監督からだった。

 「繰り上げまちませんよ!笑笑頑張って!」

 徳本監督はすぐに返信した。

 「なんとかタスキ繋がります笑」

 10区スタートの鶴見中継所。繰り上げスタートまで1分26秒と迫った時、駿河台大9区の田尻健(4年)は10区の阪本大貴主将(4年)にタスキをつないだ。

 その後、また、原監督は徳本監督にメールを送った。

 「つながり良かったね!」

 54歳の原監督と42歳の徳本監督。年は一回り離れているが、共に広島県出身で親交が深い。コロナ禍の前までは、よく酒を飲み交わし、広島弁丸出しで激論を交わすのが常だった。

 大学駅伝界きっての個性派指揮官の2人をつなぐ大切な存在が三浦学さん。

 徳本監督の広島市立沼田高時代の恩師だ。広島市立美鈴が丘中3年時に全国大会で1500メートル2位、3000メートル3位と活躍した徳本監督は多くの高校から勧誘された。「三浦先生には中学時代から熱心なアドバイスを受けていたので、沼田高進学を決めました。三浦先生のアドバイスは常に的を射ていた。とても、厳しかったけど、とても、優しかった。大きな人でした」と徳本監督は恩師の思い出を語る。

 三浦さんは日体大時代に箱根駅伝に3回出場。2年7区4位、3年10区7位、4年3区2位の成績を残した。卒業後、郷里の広島に戻り、教員を務めながら、地元の体育協会チームの選手として広島伝統の中国駅伝などで大活躍した。

 しかし、徳本監督が高校1年だった1995年の8月。三浦さんは交通事故で亡くなった。まだ、29歳の若さだった。

 「あの夏は泣いた記憶しかありません。高校では5か月だけですけど、三浦先生には、たくさんのことを教わりました。特に印象に残っている言葉があります。『速さだけを求めるなら自転車に乗ればいい、車に乗ればいい。徳本は速いだけではなく、人を引きつける走りをしてほしい』と。三浦先生の言葉は、法大時代も、日清食品時代も、忘れたことはありませんでした」

 徳本監督にとって、三浦さんは「永遠の先生」であり、指導者としての「道しるべ」となっている。

 実は三浦さんは、原監督の世羅高時代の同級生で一本のタスキをつないだ仲だ。1984年の全国高校駅伝では原監督が4区で区間2位、三浦さんが7区で区間賞とそろって活躍した。

 「三浦は努力家の遅咲き選手だった。3年時の全国高校駅伝でアンカーの三浦が30秒もあった2位のチームを抜いて準優勝の立役者になった。あの時の三浦の走りは我々の間では伝説になっています」と原監督は盟友を語る。

 原監督にとって徳本監督は、大事な友人の大事な教え子。だからこそ、トップを快走する青学大の選手の走りを最大限の集中力で見守りつつ、約6キロ後方を走る駿河台大と徳本監督にも気をかけていたのだった。

 98回目の伝統の継走。

 原監督が「パワフル大作戦」を発令した青学大は、往復路を制して総合新記録の完全優勝で2年ぶり6度目の栄冠に輝いた。2位の順大とは平成以降で最大の10分51秒差をつける圧勝だった。

 初出場の駿河台大も19位という結果以上のインパクトを残した。

 中学校体育教師を休職して編入学した31歳の今井隆生(4年)が4区、今井の教師時代の教え子の永井竜二(3年)が5区を担い、歴史的な師弟タスキリレーが実現。区間20位に終わった今井に対し、徳本監督は「2年間、ありがとう。謝ったらブッ飛ばす」という箱根史に残る「名言」でねぎらった。昨年10月の箱根駅伝予選会で8位通過した後、泣きながら恩師に電話する姿が話題になった「泣き虫キャプテン」阪本が箱根駅伝本戦では満面の笑みでゴールする姿は印象的だった。

 青学大がマークした総合新記録は10時間43分42秒。19位の駿河台大は11時間13分42秒。

 ぴったり30分の差。距離にして、ほぼ10キロの差だ。

 戦いを終え、原監督と徳本監督は互いにエールを送った。

 「青学大が33年ぶりに出場した時(2009年)は11時間29分かかった。初出場で11時間13分は悪くない。来季の駿河台大はさらに躍進するでしょう」と原監督が話すと、徳本監督は「青学大は箱根駅伝を走れる選手が30人くらいいます。選手層が厚いから強い。僕もいつか原監督の景色を見たいと思っています」と応えた。

 第98回箱根駅伝。青学大が圧勝し、駿河台大は見せ場をつくった。

 三浦さんは、母校の日体大が17位と奮わなかったことは残念がっているかもしれないけど、空の上から、盟友の原監督と教え子の徳本監督の奮闘に大きな拍手を送っていると思う。(記者コラム・竹内 達朗)

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