中嶋勝彦と拳王はなぜ無言で去ったのか…新日との5年ぶり対抗戦でノアに感じた「言葉力」の欠如

スポーツ報知
8日の新日VSノア対抗戦で激しい打撃戦を展開した中嶋勝彦(右)と鷹木信悟(カメラ・森田 俊弥)

 全11試合。最高の試合の連続だっただけに、プロレスリング・ノアの選手たちの寡黙さだけが残念でならなかった。

 8日、7077人の観客を飲み込んだ横浜アリーナで行われた新日本プロレスとノアの5年ぶりの対抗戦。チケットも即完売の大一番のWメインイベントの10人タッグマッチで新日の鷹木信悟(39)、内藤哲也(39)らの人気ユニット「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」(LIJ)と対峙(たいじ)したのが、ノアのGHCヘビー級王者・中嶋勝彦(33)、GHCナショナル王者・拳王(37)ら金剛軍だった。

 両団体のトップユニット同士の一戦は入場時から白熱。先に入場した金剛の5人はおなじみの赤のコスチュームでLIJの5分以上あるド派手な入場をリング上で微動だにせず、待ち構えた。

 ノア1・1日本武道館大会で潮崎豪(39)を破り、王座防衛を果たしたばかりの中嶋がゴングと同時にリング中央で座り込んで待つと、内藤が先鋒を買って出た。

 ともに投げを打った後、リング上に寝そべって挑発し合った2人。「トランキーロ(あっせんなよ)」と得意のセリフを言おうとした内藤を金剛は5人がかりでボコボコに。中嶋は新日の前IWGP世界ヘビー王者・鷹木と強烈な打撃戦を展開。鷹木の強烈なエルボーに破壊力抜群のハイキックで対抗した。

 拳王もパワフルな攻撃で内藤を痛めつけると、「日本一(の団体)がこんなもんか?」と叫んで挑発。激怒した内藤と強烈なエルボー合戦に発展した。最後は鷹木がタダスケ(35)を必殺のラスト・オブ・ザ・ドラゴンで葬り、トップユニット同士の対抗戦はLIJの勝利に終わった。

 しかし、遺恨はメラメラと燃え上がった。試合後もリング下で挑発し合った内藤と拳王。鷹木と中嶋はコーナーでにらみ合った。右手を高々と挙げて勝利をアピールしたLIJの5人。「拍手!」と満員の観客に要求した鷹木をリング下からにらみつけた中嶋、拳王ら5人は無言のまま引き上げていった。

 私が残念だったのは、この「無言」の部分だった。この日のもう一つのメインイベントのタッグマッチでノアの新日出身のレジェンド・武藤敬司(59)、「ノアの未来」と言われる清宮海斗(25)組と対戦し、快勝した新日のIWGP世界ヘビー王者・オカダ・カズチカ(34)、IWGP USヘビー王者・棚橋弘至(45)の2人は試合後も「言葉力」で感染防止のため、声を出しての応援が禁じられた観客たちを魅了した。

 リング上でマイクを持ったオカダが「これが本当のプロレスのチカラだと思います。まだまだ大変なことがあると思いますけど、引き続きプロレス界への応援よろしくお願いします」と絶叫すれば、棚橋もバックステージで「みんなでプロレスを信じて盛り上がっていきたいんだったら俺たちレスラーが、プロレスの魅力を、プロレスのパワー、プロレスのエネルギーを信じて…」と感極まって絶句。「何度でも立ち上がりましょうよ!」と続けた。

 そう、日本最大、最強の団体のトップたちはプロレス界全体を盛り上げようと汗を流し、自身の言葉でアピールする術(すべ)を知っている。

 一方でノアの1・1武道館大会で今回の対抗戦について、「日本のプロレス界の序列を変えるスタートだ!」と豪語し、新日の1・5東京ドーム大会に選手全員で乗り込んだ際も「いつまでも天狗になってるんじゃねぇぞ!」と新日の選手だけでなく、ファンにも「おまえらもだ! 新日が一番なのか? 全然、一番じゃねえぞ。俺たちのプロレスのクオリティーが上なんだよ」とマイクアピールした拳王も、そしてエース中嶋も無言のまま会場を後にしてしまった。

 新日の6勝4敗1分けに終わった対抗戦の結果以上に新日とノアの根本的な差を感じた私は、この「無言」の部分に疑問を感じたまま、今回の大一番を速報。その記事には、ファンの失望の声が集まった。

 「せっかく他団体との絡みなのに、試合後のインタビューを全員拒否はもったいない。新日まで乗り込んだ時には、あれだけリング上でしゃべったのに。こういうところから新日とノアは差がついたのだと思う」―

 「試合後、コメントしなかったのが問題。ここでしっかりコメントして、次につなげることができるか、できないかでプロレスラーとしての力量が問われます」―。

 「いいプロレスをし続けるだけでファンが増える時代ではないと思う。プラスでレスラーから発信しないと。ノアはそこができていない」―。

 ファンの声は正直だ。確かに「ノアだけはガチ」というプロレスファンの間で流布している言葉がある。全日本プロレスを離脱した三沢光晴さんが2000年に旗揚げしたノア。09年にリング上の事故で亡くなった創始者がリング上で貫いた姿勢同様、マイクアピールや乱闘などを極端に少なくし、試合自体のクオリティーを重視する「ガチ」の姿勢を私も支持する。

 だが、プロレス界を取り巻く環境、時代は確実に変化している。業界最大の団体・新日ですら、年間最大の興行、1・4、1・5東京ドーム大会で感染症対策のための観客数の上限制限もあり、1・4は史上最低の1万2047人。1・5も昨年の7801人を下回る6379人と動員で苦戦している。

 コロナという強大な敵と闘う今だからこそ、オカダも、棚橋も「プロレスのチカラ」を信じ、観客に感謝する言葉を発信し、今後につなげようと必死だ。

 だからこそ、私は中嶋の、拳王の、試合後の生の言葉を、ファンへの思いをこの耳で聞けず、伝えられなかったことが残念でならない。今、「ガチな団体」ノアも変わるべき時を迎えている。私は、そう思う。(記者コラム・中村 健吾)

格闘技

NEWS読売・報知 モバイルGIANTS 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真 法人向け紙面・写真使用申請