長引くコロナ禍 大打撃のタクシー業界は変わることができるか…「タクシー業界サバイバル」著者に聞く

スポーツ報知
「コロナ禍を生き抜く タクシー業界サバイバル」(栗田シメイ・扶桑社新書)書影

 コロナ禍はオミクロン株の流行で第6波に突入したとも言われる。この影響をもろにかぶりそうなのがタクシー業界だ。昨年出版された「コロナ禍を生き抜く タクシー業界サバイバル」(扶桑社新書・税込み946円)はコロナによって地殻変動がもたらされたタクシー業界の深部を描いた、利用者必読の一冊だ。筆者のノンフィクションライター・栗田シメイ氏に、254ページに込めた思いを聞いた。(加藤弘士)

 長引くコロナ禍によって、様々な業界が生き残りをかけ、変革を迫られている。栗田氏は中でも、タクシーほど大打撃を食らった業界はないと力説する。

 「理由はシンプルです。飲食店なら給付金が出てまかなえた部分もありましたが、タクシーは国土交通省管轄の交通インフラに分類されるので、コロナ禍でもある程度、台数を出さないといけなかった。街にお客さんがいなくても、出なくちゃいけなかったんです。でも街から人は消えたから、ドライバーの気持ちは荒んでくる。給料は減り、生活が厳しくなるという実態がありました」

 2020年4月7日。緊急事態宣言の発令によって、歓楽街から人が消えた。月収50万円から8万円に減少した例も描かれるなど、壊滅的な打撃を受けた様子は身につまされる。実はコロナ前、タクシー業界はインバウンド(訪日外国人旅行)の効果もあり、好景気に沸いていた。そして20年の東京五輪に突入し、さらなる利益拡大を目指していたところで、パンデミックに見舞われた。

 「コロナ以前の3、4年の間は、タクシーバブルだったんですよ。都内だとタクシードライバーの平均年収が500万円近かった。民間の一般企業と比べてもそんなに悪くないぐらいで、もっと稼いでいる人も結構いた。いい状態が続いていて、『さあ五輪!』と思っていたところ、コロナ禍になってしまいまして…」

 全世界から選手やその家族、関係者や観覧客が大挙訪れ、移動や観光にタクシーを利用することを各社とも想定。新しい車両に入れ替え、台数を増やすなどの設備投資をして20年を迎えたはずだった。だが-。

 「過去にないぐらいの投資をしたことが、会社の経営的にめちゃくちゃ負担になって…。コロナがなくて、有観客で普通に五輪が開催されていたら、業界がとんでもないぐらいに潤うことは目に見えていたんです。それが全部なくなってしまった。儲けだけでなく、日本のタクシー業界の素晴らしさを全世界に知ってもらう、千載一遇のチャンスだったんですが」

 本書を執筆するために、100人を超えるドライバーと20人以上の経営者から話を聞いたという栗田氏。ドライバーの平均年齢が60・1歳と超高齢化が進む中、多様化する働き方や配車アプリの台頭といったIT化などの諸問題に立ち向かう業界の現状は、日本社会の縮図にも映る。

 「平均年齢がすごく高かったんですが、ここ数年は『このままじゃダメだ』とあの手この手を使って、20代や30代の人を雇用しています。会社によっては副業がOKだったりとか、新卒で企業に就職しながら合わなくて辞めた人が、公務員試験や行政書士などの資格試験の勉強をする合間に、一時的にタクシードライバーを選ぶということもあるんです」

 逆風の中でも創意工夫やチームプレーを駆使して年収1000万円以上を稼ぐスーパードライバーの話や、業務の傍らに司法試験の勉強へと取り組み、高卒ながら弁護士となったドライバーの例など、濃く深い人間ドラマが描かれる。普段何気なく利用するタクシーだが、運転手一人ひとりにも大切な人生があるのだと、再認識させられる。

 栗田さんは最後に力を込めて、言った。

 「タクシー業界は近年、すごく変わってきているし、明らかに良くなっています。運転手さんは責められやすい立場の人たちですが、少しだけ想像力を持って、優しい気持ちで接していただけたらと思うんです。コロナ禍の中で、さらに多様性の時代になってきている。いろんな働き方や生き方があってもいい。この本が、それを知ってもらう機会になってもらえたらと思いますね」

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