◆第98回東京箱根間往復大学駅伝競走復路(3日、神奈川・箱根町芦ノ湖スタート~東京・千代田区大手町読売新聞社前ゴール=5区間109・6キロ)
往路を制した青学大が5時間21分36秒の復路新、10時間43分42秒の総合新記録で完全優勝。2年ぶり6度目の王者となった。9区で中村唯翔、10区で中倉啓敦(ともに3年)が連続区間新記録で圧倒した。
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青学大の「強さ」は選手だけではない。野川寛太主務(4年)を中心に21人のマネジャー陣が日々、選手をバックアップしている。
個性派の原監督率いるチームだけにマネジャーにも個性的な学生がいる。石鍋颯一マネジャー(4年)は昨年7月、猛勉強の末、国立の岡山大歯学部に合格。この4月から、歯科医を目指して新たな道に進む。
原監督は「もともと勉強は得意だったけど、選手寮でコツコツとよく勉強していた。大したもんだ」と賛辞を贈る。
石鍋マネジャーは神奈川・鎌倉学園高時代にはエースとして活躍。2018年、一般受験で青学大社会情報学部に入学し、駅伝チームの門をたたいた。2年時に5000メートルで14分8秒79をマーク。3年時の20年12月、箱根駅伝登録メンバー外による1万メートル学内記録会、通称「箱根駅伝0区」では29分27秒8でチーム4位と健闘した。最終学年の今季、最初で最後の箱根駅伝出場を目標に練習を積んでいたが、右アキレス腱(けん)痛が悪化し、選手を断念。昨年夏にマネジャーに転身した。
「箱根駅伝を走りたくて青学大に入ったので、その目標を達成できなかったことは悔いが残ります」と石鍋マネジャー。それでも、チームを献身的に支えた。
歯科医の父・聡さんは、心底、うれしそうに語る。
「高校を卒業したら、すぐに歯学部に進学してもらいたいと思っていたけど、本人がどうしても箱根駅伝を走りたいと言って。昨年、卒業後の進路として歯学部進学を報告に来た時はやはりうれしかった。青学大駅伝チームで過ごしたことは、颯一にとって決して回り道ではありませんでした。選手としては負けたかもしれませんが、これぞ『敗者(歯医者)復活』ですよ」
父の“オヤジギャグ”に息子は「その通りですね」と苦笑いする。石鍋マネジャーは決して「敗者」ではなく「勝者」の一員になった。(竹内 達朗)
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