「最高」の選手追い求め続ける 駒大・大八木弘明監督63歳の限りない熱量

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駒大・大八木弘明監督

◆報知新聞社後援 第98回東京箱根間往復大学駅伝競走往路(2日、東京・千代田区大手町読売新聞社前スタート~神奈川・箱根町芦ノ湖ゴール=5区間107・5キロ)

 「お前は、寿司(すし)は好きか?」

 ある時、駒大の大八木監督から電話がかかってきた。別に食事のお誘いではない。雑談から何かの拍子に、箱根へと話が及んだ時だった。どういう意味だろう、と答えに窮していると、闘将はそのまま話を続けた。

 「オレは好きだ。どうせ食べるなら、カウンターでうまいのを食べたい。指導も一緒なんだよ。何でもあって、それなりにおいしい回転寿司ももちろんいい。どんな選手も満遍なく伸ばしてあげられるのは大事なことだが、それ以上に世界へ羽ばたく可能性を摘んではいけない。だからエースは大事なんだ。スペシャルだよ、スペシャル」

 東京五輪男子マラソン代表の中村匠吾(富士通)ら数々の名ランナーを輩出しているからこその言葉だと感じた一方で、一番の驚きは別にあった。63歳という年齢でも、「それなり」の選手ではなく「最高」の選手を追い求める限りない熱量。例年と同じサイクルで無難な走りをするのではなく、前よりももっともっと強くなるためにどうすべきかを追求する常勝軍団。これ以上、夢の詰まったチームはないだろう。

 レース2日前、大みそかの練習にお邪魔した。駅伝が近づくと、ネガティブな発言が増えるのが大八木流。「これじゃあなあ…」。「どうするかなあ…」。あまりに弱気な言葉が並ぶので、妻・京子さんに叱られるほどだ。今回も区間配置に迷い、昼食に訪れたラーメン店でも、首をひねりながらいつもの塩ラーメンをすすった。ただ、最後に言うことはいつも一緒だ。

 「やっぱり、駅伝は何回やっても、走ってみないと分からないなあ…」

 悩んでいるのに、これ以上ないほど楽しそうな表情。天職とは、こういうことなのだと、肌で感じた。

 一時はトップに立ちながら、3位で往路を終えた今回。前回に続いて逆転優勝の可能性を残すが、3分28秒という1位・青学大との差は軽視できない。実際、「この数字が重くのしかかってくる」と険しい顔も見せた。しかし、2区区間賞の田沢に続く「スペシャル」な鈴木や6区の“秘密兵器”を残し、お膳立てはできた。賭けではなく、ただ最高の走りを求め、勝利をつかむ。2分21秒差をひっくり返した、1年前のように。(箱根駅伝担当・太田 涼)

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