MF田中碧に新春インタビュー 22年の一字は「躍」 W杯へ「世界と戦える個を磨く」

10月オーストラリア戦でゴールを決める田中碧
10月オーストラリア戦でゴールを決める田中碧

 今年11月21日に開幕するカタールW杯。7大会連続7度目の出場を目指す日本代表のキーマンとして期待されるのが、MF田中碧(23)=ドイツ2部・デュッセルドルフ=。W杯最終予選デビューとなった昨年10月12日のオーストラリア戦で活躍した新生ボランチが新春インタビューに応じ、2022年への抱負を「躍」の一字に込め、熱い思いを明かした。(聞き手・星野 浩司)

 川崎、東京五輪、ドイツ、日本代表。田中碧にとって昨年はめまぐるしい変化の連続だった。

 「これだけ多くのチームでサッカーやるのは初めて。何試合やったか分からないっすね。海外移籍で壁にぶつかったけど、学ぶことや知ることが多くて、すごく楽しい1年だった」

 昨年10月12日、W杯最終予選デビューとなったオーストラリア戦(埼玉)で代表初ゴール。この試合が21年のベストゲーム…ではないようだ。

 「たしかに得点はうれしい。でも、僕にとってゴールの価値はそんなに大きくない。そこを評価しちゃうと成長しない。点を取ればOKとなっちゃう。それ以上に必要なものがある。12月の首位・ザンクトパウリ戦(1△1)は、ゲームメイク、セカンドボールの反応、ボールが頭を越えた後の戻り、奪われた後の切り替え、90分間高いインテンシティ(強度)でのプレー…。ベストに近いプレーだったと思う」

 今夏にドイツ2部デュッセルドルフへ移籍。ゲームスピードの速さ、川崎と真逆の戦術に苦しんだ。

 「芝が日本より軟らかくて止まるのも負荷が大きくて90分間走れなかったけど、去年の最後は走行距離11キロ以上、スプリント数はチーム1位。いつ力を使うか見極めて走れるようになった。川崎と違ってボール保持の時間が短くてボールに関わる回数はすごく減って、1回1回のプレーの質が求められる。ボールが来ると思っても来ないし、僕の意図で出した縦パスが通らずに選手や監督から怒られることもあった。すごくストレスを感じたし、感覚の差を埋めるのに苦労したけど、パスが取られる前提で次の動きを考えられるようになった。適応するのに時間がかかったけど、去年のラスト3試合くらいでやっとつかんできた感覚がある」

 昨夏の東京五輪で敗退後、「僕たちはサッカーを知らなすぎる」と痛感。海外移籍後、その思いをより強くした。

 「自分は日本で通用してただけだった。世界との距離はすごく遠い。デュエル(1対1)やインテンシティと、世界で戦える個を磨くことが必須。遠藤航くんのように屈強な外国人からボールを奪える守備力、(ドイツ代表MF)ゴレツカのように2列目から点を決められる得点力を盗みたい。アーセナルに移籍したトミ(冨安健洋)が1つのステップアップの良い例で、僕がビッグクラブでプレーすることが日本の強さにつながる」

 日本代表でプレーする海外組の先輩選手たちからも胸に響く言葉を受けた。

 「みんなから『結局は個が大事だよ』『日本より競争率も激しいし、自分が生き残ることを一番に考えなきゃいけない』と言われる。その感覚は日本ではなかった。常に椅子が確保されてない。日本とは全然違う。日本なら代表からチームに戻れば試合に出れるけど、こっちは世界中から選手が集まって、ちょっとダメなら半年に一度他の選手を獲得する。厳しい世界だけど、逆に1試合1試合がビッグクラブへ移籍するチャンス。1試合にかける可能性は日本より大きいです」

 先月下旬からのウィンターブレイク(冬季中断期間)は、毎日筋トレに励んでいる。

 「スタジアムのトレーニングルームで毎朝11時頃からやってます。東京五輪の時に筋トレができなくて筋力が落ちてたし、代表ウィークもあって頻繁にできなかった。なので、今はがっつり全身鍛えてます。動ける状態を維持しながら、体重74キロから2キロくらい増やしたい。守田(英正)くん、航くんも体が1回りデカい。僕はビジュアル的に体が弱いと思われてるので、強い相手とぶつかった時に飛ばされないようにフィジカルは鍛えたい」

 カタールW杯に挑む2022年に込める一字は「躍」だ。

 「今まで日本代表は自分と違う世界という感覚で興味もなくて、18年のロシアW杯も生で試合を見ていなかった。でも海外にきてA代表にも入って、やっとスタートに立った。もちろんW杯には出たいけど、チームでケガせずに試合に出続けることが大事。結果と内容で違いを見せて、個人、チームとして上にいくために飛躍の1年にしたい」

 ◆田中碧からみた三笘薫 (川崎下部組織で)ずっと一緒にプレーしてきたし、お兄ちゃんみたいな感じ。真面目で落ち着いていて、点を取ってめちゃくちゃ喜ぶのは珍しい。独特なドリブルがすごくて、海外移籍して体やドリブルの力強さはもっとすごくなると思う。分かりあえる存在だと思うので、いろんな違いを生み出せれば。僕は1個後ろのポジションなので、彼をうまく生かしたい。

 ◆田中 碧(たなか・あお)1998年9月10日、川崎市生まれ。23歳。さぎぬまSCから小学3年で川崎の下部組織に入団。ジュニアユース、ユースを経て2017年にトップチーム昇格。19年ベストヤングプレーヤー賞、20年ベストイレブン選出。21年6月にドイツ・デュッセルドルフへ期限付き移籍。19年12月に東アジアE―1選手権・香港戦でA代表デビュー。昨夏の東京五輪に出場。180センチ、74キロ。大好物はマグロのすし。

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