【新春野球記者コラム】高校通算70発・有薗直輝を追いかけた2021年 プロの舞台で再会を

スポーツ報知
新庄剛志監督とポーズをとるドラフト2位の有薗直輝(右=左は同1位・達孝太)

 「北海道日本ハム、有薗直輝」。運命のドラフト会議。名前が呼ばれ、私は安堵(あんど)した。4月に入社してから、夢だったスポーツ記者としてアマチュア野球を中心に球児の汗と涙、そして多くの笑顔を目にしてきた。その中でも特に印象深いのが、日本ハムからドラフト2位で指名された有薗直輝内野手(18)=千葉学芸=だ。

 彼と出会ったのは、本紙で高校生スラッガーを紹介する記事を書くための取材だった。第一印象は、少しあどけなさが残る少年。まだ取材経験が少なく、緊張していた私を柔らかな笑顔で和ませてくれた。しかし、バットを握ると雰囲気が一変。豪快なスイングから放たれる打球はぐんぐん伸びていく。試合中も積極的に仲間に声をかけ、仲間からも慕われている姿が印象的だった。

 取材で、有薗は聖地への強い気持ちを明かしてくれた。「プロに行きたいという夢ももちろんあります。でも、一番の夢は甲子園です」。小6時にマリーンズジュニアに選出され、中学では名門・佐倉シニアで主軸を務めたエリートが、進学したのは、甲子園出場がない千葉学芸。「この高校からどうしても甲子園に行きたいという思いがあります。甲子園でホームランを打ちたい」。自分自身の力で歴史を変えたいという思いがあった。

 彼の夏を、私は追いかけ続けた。高校通算70本塁打を誇る豪快な一発が出ないまま迎えた7月15日、千葉大会4回戦、千葉黎明戦。前日の夜に上司から「遠いから大変だろうけど、有薗と心中する覚悟で頑張ってくれ!」と連絡をもらい、千葉・長生の森へ始発の電車で向かった。もしかしたら、今日打つかもしれない。見届けないと―。

 しかし、待望の一発が出ることはなかった。4打数2安打の活躍を見せるも、チームは6―8で敗退。有薗の夏は静かに終わった。この日の取材には、他社が1人も来ていなかったため、球場の隅で2人で話をした。「この学校に入ったのは甲子園に行くためだったので本当に悔しい。自分が主軸として引っ張っていかなければいけない責任感があった」。いつもの笑顔とは対照的に、顔をゆがめた。「この悔しさを上の世界でいかしていきたいです。球界を代表するようなバッターになりたい」。涙ながら話してくれた有薗と「今度はプロ野球選手になった有薗くんを取材させてください」とプロの舞台での再会を誓った。

 後日、別の取材現場で他社の記者から「唯一、有薗の涙を見た女」と呼ばれた。しかし、私が見たものは涙だけではない。甲子園に対する熱い気持ち、チームへの思い。高校野球に全力を注いだ姿を、最後まで見届けることができたことをとてもうれしく思う。どうか、今度こそ夢をかなえてほしい―。そして10月11日。有薗の名前が呼ばれた。

 10月14日、指名あいさつの日。高校最後の夏ぶりに、私は彼の元を訪れた。「シーズンで30~40本打てるような選手になりたい。日本一に貢献できるような、チームから頼られるようなバッターになりたいです」。カメラのフラッシュを浴びながら、希望に満ちあふれ、堂々と話す姿は、いつもより大きく、頼もしく見えた。きっと、高校野球の悔しさを、新たな舞台で晴らしてくれることだろう。私も来季からプロ球団を担当することが決まった。記者として、もっと成長した姿で有薗と再会できる日を待ちわび、今日もペンを走らせる。

(記者コラム・水上 智恵)

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