◆報知杯弥生賞ディープインパクト記念・G2(3月7日、中山・芝2000メートル、10頭立て=良)
毎週のように“タラレバ”は禁物と肝に銘じているが、今年のNHKマイルCでG1馬となったシュネルマイスター(牡3歳、美浦・手塚貴久厩舎、父キングマン)にとって報知杯弥生賞ディープインパクト記念は、大きな分水嶺だったと思う。
デビュー2連勝を飾ったひいらぎ賞は、ノーステッキの大楽勝。陣営は中山への適性の高さを見込み、マイルから2000メートルへの距離延長でクラシックへの試金石と位置づけていた。結果は後の菊花賞馬タイトルホルダーに逃げ切りを許しての2着に終わったが、まんまとスローペースに持ち込まれた展開のアヤもあっただろう。手塚調教師は「弥生賞は距離と言うより、(余裕を持って)緩く仕上げたのはあったと思う」と振り返ったが、結果的に最も適性の高いマイル路線に切り替えてのその後の活躍は、ご存じの通りである。
そこで最近、手塚師に「あそこでもし勝っていたら…」と問いかけたところ、「皐月賞には行っただろうけど、エフフォーリアは強いからね。マイルだったら、こっちの方が強いし、1800メートルだったらいい勝負かな」という答えが返ってきた。皐月賞、天皇賞・秋、そして有馬記念とG1を3勝したエフフォーリアの強さは認めるが、皐月賞で激突していたら、さらにどれほどハイレベルなレースになったことか。距離適性の差に泣かされたかもしれないが、3歳春の時期ならポテンシャルの高さで好勝負を演じていてもおかしくないかもと個人的には考える。
春はNHKマイルで圧巻の末脚を繰り出して白星をつかみ、古馬の強豪相手に挑んだ安田記念も3着に好走。秋も毎日王冠制覇、マイルCSで2着とトップレベルの力を持っているのは間違いない。そのマイルCSの3着馬は、2歳時にホープフルSを勝ち、報知杯弥生賞ディープインパクト記念で3着だったダノンザキッド。今さらながら2021年の3歳世代のレベルの高さを思い知らされるわけだが、いろいろな意味で中身の濃い“トライアル”だったと言える。
(坂本 達洋)