NHKが新たな試みに挑んでいる。国際放送のニュース番組「NHK NEWSLINE」に「おはよう日本」(月~金曜・前5時、土曜・前6時、日曜祝日・前7時)に出演中の森下絵理香アナウンサー(29)と川崎理加アナ(27)を起用し、日本語と英語でニュースを読む“二刀流アナ”が誕生。番組によってメイクや振る舞いも変えている。
“国際仕様”でニュースを読む2人は、まるで別人のようだ。前髪を立てて目つきの違う森下アナと、メイクと服装をはっきりした印象に変えた川崎アナ。心なしか英語を話す声も低く聞こえる。
2人とも「おはよう日本」に出演している時は落ち着いた雰囲気。森下アナは「前髪をなくして。元々たれ眉なんですが、ちょっと角度を上げて(描いて)います。説得力と言いますか、気合を入れる意味もあります」と明かす。川崎アナも「自分の中で自信や気持ちが入ります」とのこと。上司にあたる山本美希アナ(52)は「英語圏ではベテランが(ニュースを)読むことが多いので、幼く見えないように違う形で臨んでいます」と説明する。
米国で生まれ、TOEIC満点(990点)の川崎アナと、高校時代の2年間を米国で過ごしTOEIC960点の森下アナ。英語を話すだけなら問題ないが、ニュースを読むのはわけが違う。森下アナは11月に初めて出演した際は「手がぶるぶる震えるのが分かった。新人の時でもならなかったのに」と振り返る。
全世界160か国、3億8000万世帯で視聴できる番組。英語を勉強する受験生や、ビジネスマンなどが見ている。川崎アナも「教材として使ってくださる方もいるので、アナウンサーとして正しい英語を伝えたい」と思いを明かす。
引っ越すと地元の方言を忘れるように、英語も常に使わないと鈍ってしまう。川崎アナは「日常的に使っていないと、とっさに出ないから」と家にいる時も英語で「Ok、I turn on the TV(よし、テレビをつけよう)」などと独り言をブツブツ。森下アナも工事現場の近くなど周囲の雑音が大きい時は「A、B…」と練習するという。「コロナ禍でマスクをしているから、他人から口の動きが分からなくていい」と、“コソ練”には都合がいいと笑った。
発声練習も違う。日本語には「あ、え、い、う、え、お、あ、お」と有名な方法があっても、英語には特にない。さらに「日本語で滑舌がよくても、英語でも同じとは限らないんです」(川崎アナ)。そこで山本アナが編み出したのは、あおむけになり、腹筋運動をしながら「A! B! C!」と「Z」まで26回、頭を持ち上げる特別メニューだ。森下アナは「日本語と違い、アクセントが強い英語は腹筋を使いますから効果的です」と効果を実感する。
アナウンサーになったきっかけはそれぞれ。川崎アナは大学時代に英語と日本語を使って朗読するボランティアで「人に役に立つことを」と思い立った。対して森下アナは大学時代に気象予報士の資格を取るなど「いろんなことに興味があった」。ただ、出演を伝えられた際には「一度、考えさせてください」と戸惑ったという。
それでも周囲に支えられて“二刀流アナ”は奮闘中だ。発音に自信のなかった森下アナは、初めて読んだ時「(上司の)山本さんに『ちゃんと聞こえているよ』と言われたことが支えになっている」と涙ぐんだ。
川崎アナも「私たちは画面では1人にみえますが、周りにはスタッフや記者、英語に堪能な仲間もいます。文法などもすぐに相談できますし、小さなコミュニケーションの積み重ねで不安が解消されます」と“全員野球”の大切さを説く。「英語では番組を『show』と言います。『それでは、いいshow time』を!」と呼び掛けた。
◆「NHK NEWSLINE」 世界160か国に発信され3億8000万世帯が視聴できる「NHKワールド JAPAN」のメインニュース。毎日、毎時0分から曜日によって10~20分放送される。日本国内でもインターネットやケーブルテレビで視聴できる。
◆川崎理加アナ
▼経歴 米ミシシッピ州出身。上智大学経済学部卒業後の2016年4月、入局。高松、大阪を経て、今年から東京アナウンス室
▼担当番組 「おはよう日本」土日祝日キャスター
▼好きな食べ物 納豆、キムチ、トマト系のパスタ
▼趣味・特技 テニス、歌、料理
▼モットー 伸び伸び
▼プチ自慢 飛び級をしたため、卒業証書を日米の2枚持っている
◆森下絵理香アナ
▼経歴 神奈川県出身。上智大学理工学部卒業後の2015年4月、入局。福井、仙台放送局を経て、20年から東京アナウンス室
▼担当番組 「おはよう日本」5時台キャスター、「ウチのどうぶつえん」(不定期放送)
▼アルバイト歴 大学時代に気象情報会社「ウェザーマップ」で
▼好きな食べ物 ラーメン、肉、いちご
▼趣味・特技 道ばた観察、アコースティックギター、ウクレレ
▼モットー 人は人。自分は自分
▼プチ自慢 手先が器用、ぬいぐるみが作れる