2001年にグリコ「アイスの実」のCMでデビューした神田沙也加さん(享年35)は今年で芸能生活20年。「聖子の娘」として鳴り物入りでデビューを飾り、「親の七光り」と揶揄(やゆ)されながらも、ミュージカルに活路を見いだし、ディズニー映画「アナと雪の女王」など声優としても活躍した。一方、波乱万丈な芸能生活の裏側には「偉大な母」との微妙な関係もあった。
17年2月に行われたスポーツ報知インタビューで神田さんは両親から受け継いだ才能について「父の芝居、母の歌と両方の要素が入っているというのはステキなことだし、うれしい」と語っていた。同じ世界で生きる先輩として最大限のリスペクトを持っていたことが分かる。
神田さんは同年4月に村田充(44)と結婚。その際、松田が祝福のコメントをしなかったことで母娘の間に溝が出来ていることが一部メディアで報じられた。今年5月に行われたインタビューでも関係者から「お母さん(松田)のことは絶対に聞かないでください」と“質問NG指令”が出され、距離を感じさせた。ただ、それは単なる関係悪化というより、ミュージカル女優として自立するための決意表明にも思えた。
偉大な両親を持ったことで幼少期に苦労したことも事実。神田さんは著書で過度に注目を浴びた小学校時代のことを告白している。運動会の様子が翌日のワイドショーで放送されたり、行事の度に学校側が警備員を配置して、「それって、私のせい?」と悩んだことも。両親が離婚し、母は米国進出することになり神田さんは中学時代に4度も転校を経験した。
5月のインタビューでは芸能生活20年を振り返り「大地真央との出会い」「菊田一夫演劇賞」「アナ雪の大ヒット」の3点をターニングポイントに挙げた。その3つを日々の糧としていた。ミュージカルには特に思い入れが強く「演劇の聖地」と言われる帝国劇場の舞台に立つことに喜びを感じていた。
11月から帝国劇場で始まった「マイ・フェア・レディ」に向けて、キラキラと瞳を輝かせながら「この舞台に立てるだけでもうれしい」と声を弾ませた。それを聞いて記者が「沙也加さん、前向きですね」と伝えた時の反応が忘れられない。「え?」と驚き、しばらく絶句してから「初めて言われました。決してポジティブではないけど、自分のペースはあるかな」と話した。神田さんは人一倍の繊細さを心に秘めていた。(有野 博幸)
◆自殺を防止するために厚生労働省のホームページで紹介している主な悩み相談窓口
▼いのちの電話 0570・783・556(午前10時~午後10時)、0120・783・556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)
▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570・064・556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)
▼よりそいホットライン 0120・279・338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは0120・279・226(24時間対応)