◆駒大(前回1位、56年連続56回目)=出雲5位、全日本優勝=
来年1月2、3日の第98回箱根駅伝で2連覇を目指す駒大が16日、オンラインで会見した。前回5区4位で優勝に貢献した鈴木芽吹(2年)は9月に右大腿(だいたい)骨疲労骨折のアクシデントに襲われた。出雲駅伝と全日本大学駅伝を欠場したものの順調に回復して登録メンバーに名を連ねた。大エースの田沢廉主将(3年)と並ぶ二枚看板は、今季最初で最後の駅伝で、悔しさを晴らす激走を見せる。
悔しさと感謝―。右大腿骨の疲労骨折で戦列を離れた鈴木は、今季2つの駅伝をテレビ越しに複雑な思いで見つめた。
「出雲駅伝はチームとして3冠を目指していての5位でした。本当に悔しいのと、自分が走れなくて情けないというのが大きかった。全日本は足並みそろわない中でも、優勝を勝ち取れた。その時は、走れない悔しさよりも、仲間たちが頑張ってくれたのがうれしかった」
夏までは抜群の強さを見せていた。3月の日本学生ハーフで2位に入ると、5月の日本選手権1万メートルで2位田沢に2秒47差の3位。7月には5000メートルで駒大新記録となる13分27秒83をマークした。確実に力を付けて臨んだ夏合宿。「成績も上がっている中、けがへの注意、油断していた部分はあったかなと思っています」。落とし穴があった。
長野・佐久長聖高時代も似たような箇所を3度、疲労骨折した。「骨密度が低い体質で、治るのにも時間がかかる」。入学直後は重点的なケアに加え、練習量をこなせるだけのスタミナがなかったことで再発もなかった。しかし、タフさが増し、「競技人生で一番走り込んだ」という夏合宿を終える頃には痛みが出ていた。
それでも、心は折れなかった。リハビリのために、連日2時間以上泳いで心肺機能の向上に努めた。11月中旬には練習復帰。大八木弘明監督(63)は「25キロ以上の距離走も何度かやれている。往路でも復路でも起用できる」と信頼を寄せる。鈴木も「前半シーズンに磨いたスピードを生かして、往路のどこでも行くつもり」と意気込む。
箱根登録選手中、1万メートルでは全体トップの田沢に次ぐ日本人2番手。故障明けでも「田沢さん以外に負けてはいけないと思っている」と積極的なレースでチームを上位に導くつもりだ。
どんな道を選んでも、どこでも芽吹くように―。込められた名前の通り、新春の箱根路で再び芽吹き、大輪の花を咲かせる。(太田 涼)
◆鈴木 芽吹(すずき・めぶき)2001年6月3日、静岡・熱海市生まれ。20歳。泉中3年時に3000メートルで8分31秒45をマークし、長野・佐久長聖高へ進学。全国高校駅伝には3年連続で出場し、1年6区1位、2年5区4位、3年1区7位。駒大に進み、前回の箱根駅伝では5区4位。自己記録は1万メートル27分41秒68、5000メートル13分27秒83。
◆駒大陸上部 1964年創部。箱根駅伝には67年に初出場。総合優勝7回。全日本大学駅伝は優勝14回、出雲駅伝は優勝3回。学生3大駅伝最多となる通算24勝を誇る。2015年からOBで男子マラソン元日本記録保持者の藤田敦史コーチ(45)がスタッフに加わった。長距離部員は選手44人、学生スタッフ15人。タスキの色は藤色。主なOBに東京五輪男子マラソン代表の中村匠吾(富士通)。