FA移籍は時代の流れにそぐわないのか コロナ禍、若手育成…又吉克樹が新天地を求めても歴代最少1人

スポーツ報知
又吉克樹

 中日担当だった2008年、メジャー志向の強かったエース・川上の動向を気にしていたら、ノーマークだった中村紀のフリーエージェント(FA)宣言を他社に先んじられた。デスクから「抜かれ記者」と叱責されたが、反論の余地もない。

 この年は井端、荒木、森野もFA権を保持していた。チームを率いていた落合監督に「これだけFA選手がいたら騒ぎになります」と話を振ると、「俺がFA移籍する時は、自宅前に新聞各社のハイヤーが並んだもんだよ」と鼻で笑われたのも、甘酸っぱい思い出だ。

 そんなストーブリーグに異変が生じている。広島・大瀬良、九里、阪神・梅野らが権利を行使せず残留を表明したこともあり、FA宣言選手が公示された現在、他球団と交渉のテーブルに着く可能性があるのは中日・又吉克樹のみ。新天地を求めても、FA移籍1人は1993年の制度導入以来、史上最少となる。

 年によって豊作もあれば不作もあるのがFA市場。だが、このような事態になっているのはいくつか要因がありそうだ。

〈1〉コロナ禍での苦しい球団経営

 新型コロナウイルスの感染拡大により、ここ2年は無観客、人数制限により、入場料収入は激減した。各球団が予算を組む上で、人件費の削減はやむを得ない。FA選手獲得に伴う資金調達が困難となったどころか、日本ハムのように実績あるベテラン、中堅選手をノンテンダーFAにする球団まで出てきた。

〈2〉海外FA権行使の減少

 ここ5年間で海外FA権を行使してのメジャー移籍はオリックス・平野、西武・秋山、ロッテ・沢村の3例。今オフの広島・鈴木も含め、ポスティングの申請が同期間に9件(非成立3件)あったのとは対照的だ。権利取得に最短9年を要し、出ていかれた球団は人的、金銭の補償もない。FAでの米大リーグ挑戦はトレンドではなくなってきた。

〈3〉選手育成と若手の台頭

 FA補強の主役を張ってきた巨人、ソフトバンクの2球団は3軍制を敷いていることも共通点だ。育成選手を含めた大所帯から新戦力を発掘している。また今季はセ・パ両リーグで新人王争いがし烈を極め、日本シリーズではヤクルト・奥川、オリックス・宮城、紅林ら高卒2年目の選手の活躍も目立った。アマ選手がいち早くプロで順応するケースが増えており、ドラフト重視の傾向が強まっている。

 ただ来年に目を向けると、西武・森、楽天・松井らが国内FA権を取得見込みで、大型契約を結んだとはいえ、メジャー移籍を夢見るソフトバンク・千賀も海外FA権を手にする予定だ。さらにコロナ禍が収束し、球団経営が上向く可能性もある。1年後はどのようにマーケットが動くのか。来オフのFA市場は一つの分岐点になるかもしれない。(プロ野球遊軍・表 洋介)

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