【高校野球】東海大相模・門馬前監督が“最後のミーティング”「コロナは思い出したくもない悪夢」全文

スポーツ報知
センバツ優勝旗とともに記念撮影を行う門馬ファミリー(左から前監督、次男・功、長男・大さん、長女・花さん、妻・七美枝さん)

 今春のセンバツを制しながら、新型コロナの集団感染で今夏の神奈川大会を準々決勝で辞退した東海大相模・門馬敬治前監督(51)=今夏限りで退任し、9月末で退職=が5日、神奈川・相模原市内の同校グラウンドで行われた3年生の引退試合に来場。クラスターの影響でできずにいた“最後のミーティング”を3か月遅れで行った。

 すでに同校を去っている門馬前監督はこの日、引退試合終了後に行われた「3年生を送る会」でグラウンドに立ち、全部員と久しぶりに顔を合わせた。そして、野球部を巣立っていく3年生31人に旅立ちの言葉を贈ったほか、志半ばで夢が絶たれた今夏の戦いや、夢を奪った形となった新型コロナへの思い、母校でもある東海大相模への思いなどをナインに熱く、そして赤裸々に語りかけた。

 門馬前監督は今夏限りでの退任を表明した上で甲子園春夏連覇をかけた戦いに臨んでいたが、7月23日に部員の新型コロナ感染が判明。神奈川大会への出場辞退を余儀なくされ、翌24日に予定されていた藤沢翔陵との準々決勝は不戦敗に。不完全燃焼で最後の夏を終えただけでなく、クラスターの対応に追われたまま監督を退任し、その後、同校も退職。通常であれば、夏の大会で勝っても負けても行われる“最後のミーティング”ができないままでいた。

 

 門馬前監督のあいさつ全文は以下の通り。

 7月24日、また23日。夏の大会辞退という日が、私にとって一生忘れることができない1日となりました。どう、表現していいのか分かりません。どう、選手と向き合えばいいのか分かりません。もちろん、悔しさがあります。同時に、大会に出られないという申し訳ないという気持ち。これで、3年生をはじめとして高校野球が終わってしまうという残念な思い。ひと言では言い表すことができない、そんな時間を過ごしました。

 それから、選手たちの体調を気遣い、最善を尽くし、最後に選手が寮を出るまで、または健康観察期間が終わるまで、すべてのやりとりをしたその時間は正直、悪夢でした。思い出したくもない、苦しい時間でした。あの時間がなければ…。あんなことがなければ…。グラウンドを去った今でも感じています。

 こんな形でグラウンドに立とうという気はありませんでした。相模高校史上初の春夏連覇を目指して、死に物狂いで最後の夏にかけて。それがあんな形で終わってしまう…。非常に苦しい時間を過ごしました。神様はいるのかな。いると信じていた自分でしたし、そう、選手にも話をしてきました。でも、あの時ばかりは神様を恨みました。

 でも、嫁(七美枝夫人)がこう言ったんです。「パパ、最後の最後まで選手の面倒を見ようよ。これが最後の相模高校の野球部の監督としての仕事だよ」って。日本一を取ることも仕事かもしれません。強くすることも仕事かもしれません。でも、一番大事な選手を最後の最後までしっかり見ていこう、と。これが監督として与えられた仕事なんだ、と。そう言われて、選手が最後に寮を出て、そして健康観察期間が終わったという連絡をもらって、すべてが終わった時に、本当に私の相模高校での監督としての仕事が終わったのかなと思いました。取り戻すことのできない時間ですが、それからも毎日、時計の針を止めることなく過ごしています。

 相模高校の野球部は一生、原貢野球であることは変わりありません。誰が監督になろうとも、原貢野球。これしかないんです。相模の野球とは、それが基本です。目標は全国制覇、日本一。そして、目的は人間教育、人格形成。それ以外に言葉はありません。ずっと、このグラウンドでタテジマのユニホームを着た人間たちは、その教えをもとにこれからも伝統を作り上げていくんだと思っています。

 3年生のみなさんには3年間、苦しい、厳しい、嫌な毎日だったと思います。自分が思うように行かないことがたくさんあったと思います。なんでこんなところでけがをするんだ、なぜメンバーに入らなかったんだ―。いろんな思いがあったと思います。みんな、終わった時には簡単に「それを力に変えよう」と言います。でも、そんな簡単に力に変えられません。そんな簡単に未来に一歩を踏み出すことはできないんです。だから、大いに苦しんでください。大いに悩んだ時をずっと自分の心の中にしまっておいてください。それが、強さです。

 私は「うまい選手は要らない。強い選手が欲しい」、こう言い続けてきました。「本気の勝負をしよう」と言い続けてきました。どうか、うまくいくいかないは別にして、本気の勝負を。このグラウンドで培ったものを、そして流した汗を、流した涙を自分の財産にしてほしいと思います。大きくなる。立派になる。そんなことは要らないでしょう。どうか、全力で向かっていってください。どうか、本気でやってみてください。そうすれば、何かが変わっていくと思います。

 そういうことを、僕は高校時代から今まで、このグラウンドで学びました。おそらく、このグラウンドに立つのもきょうが最後です。このグラウンドで最後、話をさせていただける時間を作っていただけたことに感謝をしています。自分がここまでになれたのも、相模高校の野球部のおかげです。相模高校の野球部がなければ、今の自分はなかっただろうと。だから、この相模高校の野球部を誇りに思っています。そして、これからますます続く相模高校の野球部の伝統を応援したいと思います。

 1、2年生のみんなは、昨年と同じような形で結果を待ちます。自分を信じて、結果を信じて、来春に向かってやってほしいと思います。それは、毎日が大事です。諦めたら終わりですから。ぜひ、このグラウンドで頑張ってください。

 保護者のみなさまにも、たくさんのお力添えをいただいてやってくることができました。本当に感謝をしています。また、これからも相模高校を応援していただきたい。それは、野球部はもちろんのこと、相模高校に関わるいろんなクラブ、そこに多くの応援をしていただきたい。それが、僕は本当のタテジマのプライドだと思っています。

 いろんな人生をかけてきた相模高校の野球部です。このグラウンドで、その最後の卒業生と一緒の時間を過ごせたことを幸せに思いますし、忘れることのない時間となりました。まだまだ話は尽きませんが、みなさまに感謝の言葉を添えさせていただいて、私の最後の(あいさつ)、選手にとってはミーティングかな、を終えたいと思います。

 7月のあの時から時間はたちましたが、いい顔をした3年生と会えたことを本当にうれしく思っています。本当にありがとうございました。

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