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スキマスイッチ「僕らが絶対に頑張らなきゃいけないのはライブ」コロナ禍での葛藤や20周年への思い

「僕らの曲が何か人生に根付いていてほしい」と願ったスキマスイッチの大橋卓弥(左)と常田真太郎(カメラ・佐々木 清勝)
「僕らの曲が何か人生に根付いていてほしい」と願ったスキマスイッチの大橋卓弥(左)と常田真太郎(カメラ・佐々木 清勝)

 人気デュオ・スキマスイッチは結成から20年以上、ライブ活動に軸足を置き、第一線を走り続けている。11月24日に3年半ぶりの新アルバム「Hot Milk」「Bitter Coffee」を2枚同時リリース。インタビューに応じた2人は、コロナ禍を挟んで制作された今作や、デビュー20周年への思いを語った。(加茂 伸太郎)

 大橋卓弥(43)は「表現したいことが、最も色濃く届く空間がライブなんです。僕らが絶対に頑張らなきゃいけないのはライブ」と力を込めた。表現力の豊かさと、心に残る歌詞がスキマスイッチの魅力。生の音、生の演奏に人一倍こだわりを持って22年間、走り続けてきた。

大橋 クリックというメトロノームを鳴らせば、ズレも少ないのに、僕らはあえて使わない。ステージ上で手を離すと、無音の状態。コンピューターを使えば何でもできるものを(極力)使わずにやる。それは人間っぽさを出したいから。

 観客と生み出す熱気や高揚感は何よりの力になる。常田真太郎(43)は「リアレンジだけのステージ、カバーしかやらないステージ、『何かしらやろう!』が積み重なって、ここまで来ることができた。いつしか、ライブがスキマスイッチのステータスになった」と自負。新型コロナの影響で昨年からは苦心が続くが、来年2月10日の栃木公演(宇都宮市文化会館)から約1年ぶりのツアーに入る。

常田 コロナ禍で地球全体の断捨離みたいな感覚になった。何もしない選択肢もあったけど、スキマスイッチが出した答えはポジティブ。今は見に行けるけど、声を出せない。次は声を出せる時期がきっと来る。2段階で開放されていくと思うけど(状況に応じて)できることを探していきたい。

 1999年、大橋が自らの曲のアレンジを常田に依頼したことをきっかけにスキマスイッチを結成。「奏(かなで)」や「全力少年」「ボクノート」など数々のヒット曲を送り出した。08年には個々のスキルアップのため、活動と並行しながら互いにソロ活動も行った。

 中堅と呼ばれる世代になったが、大橋は「自覚を持たないといけないと思いつつも、そのつもりはない。まだまだこれから」と貪欲だ。TBS系音楽特番「クリスマスの約束」で共演する小田和正らから受ける影響が大きいという。

大橋 小田さんは見ていてパワフルで、止まっている感じがしない。その姿に憧れはあります。小田さんは74歳、僕は43歳。31年歌い続ければ、単純に時間だけは追いつける。でも、果てしなく遠い。

常田 音楽の新しい手法を一つ知ると、先輩方への尊敬度が一つ上がる。やればやるほどリスペクトが深まるというか。(技術的な部分の)その差はドンドンと開いていく気もしている。

 コロナ禍前の「Hot Milk」、ウィズコロナ時代に生まれた「Bitter Coffee」。2枚のアルバムは新型コロナを境に制作されたものだ。

大橋 世の中がストップした。東日本大震災もそうだったけど、こういった時、音楽がどれぐらいの力を持っているかを考えさせられる。(昨年4月の)最初の緊急事態宣言の時、前向きにとらえて曲を書こうと思ったけど、不思議と書く気になれなかった。

 無力感から途方に暮れる日々。自らを奮い立たせたのは「音楽家として、その時の自分を記録するんだ」という思い。書き上げたのが「Bitter―」収録曲の「あけたら」だった。

大橋 無理やり絞り出した感じだけど、たまっていたやり場のない怒り、不安を吐き出せて気持ちが楽になった。この曲ができたからこそ、今回のアルバム制作につながった気がします。

 前作「新空間アルゴリズム」(18年)から3年、何十曲のデモ音源を聴き返す作業から始めた。収録曲「いろは」は09年に制作され、10年以上の時を経て日の目を見た。

大橋 デモテープを聴き始めた瞬間に鼻歌で歌えた。忘れられないメロディーってあるんだな。事あるごとに「この曲、良くない?」って言っていたけど、シンタ君(常田の愛称)には響いていなかった(笑い)。

常田 最初の頃はピンと来なくて。数年して聴き直して、この曲いいねって卓弥に聞いたら「ほら~。でしょ?」って。その時の記憶はしっかりとある(笑い)。

大橋 今リリースすることで当時できなかったアレンジ、曲そのものの良さを引き出せる。何年か過ぎて、こうして報われる曲たちがあるのはうれしいですね。

 サブスクリプション配信などでリスナーが手軽に音楽を聴ける時代になった。そのことを考え、収録曲は7曲ずつにした。

大橋 本当は2枚買ってほしいけど(笑い)、どちらかしか聴かない方がいてもいい。僕らを知らない人にも手に取ってもらいたい。

常田 「2枚同時発売なんだ」が取っかかりでいい。欲しい情報を掘り下げる時代になったからこそ、話題づくりは必要。いろいろな場所で「スキマスイッチ」の名前が出るようにやりたい。

 2年後の2023年にデビュー20周年イヤーを迎える。

大橋 特別に準備していないし、「20周年」は向こうから迫ってくると思う。普段、支えてくれるスタッフさん、お客さんへの感謝の1年になる。先のことは分からないけど、ツアーができるようになればいい。

常田 同じく。支えてくれた方々に、何かしらの感謝の気持ちを伝えられる1年にしたい。僕個人としては、相方に対して「どうだ!」と思わせたい気持ちが強い。それをなくしたらスキマスイッチじゃなくなる。卓弥と「いいね!」「面白いじゃん!」という曲を作り続けていきたいです。

 2人は22日に日本武道館公演を行う。スキマスイッチの楽曲と、その日のためだけに書き下ろされた物語(映像)を融合。新しいステージを展開する。大橋は「普段とは違うものを届けたい、から始まった企画」と説明。「新しい音楽の楽しみ方を提案できたら。一夜限りなので成功するか分からないけど、うまくいけば面白いものになる。頑張ります!」と話した。

  • 武道館公演に向け新企画の準備を進めるスキマスイッチの大橋(左)と常田

    武道館公演に向け新企画の準備を進めるスキマスイッチの大橋(左)と常田

 ◆スキマスイッチ 1999年結成。2001年新宿、渋谷を拠点に本格的な活動開始。03年シングル「view」でメジャーデビュー。04年シングル「奏(かなで)」でブレイク。05年紅白歌合戦初出場(07年まで3年連続)。13年初の日本武道館公演。16年から21年まで「ハナツ」が全国高校ラグビー大会テーマ曲(17年は「premium ver.」)。

「僕らの曲が何か人生に根付いていてほしい」と願ったスキマスイッチの大橋卓弥(左)と常田真太郎(カメラ・佐々木 清勝)
武道館公演に向け新企画の準備を進めるスキマスイッチの大橋(左)と常田
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