口コミで人気拡大中の映画「アイの歌声を聴かせて」で、吉浦康裕監督が考えたこととは

スポーツ報知
「アイの歌声を聴かせて」のSNSでの盛り上がりを喜ぶ吉浦康裕監督

 10月29日に公開された「アイの歌声を聴かせて」が、公開から1か月以上が経過した現在も口コミでジワジワと人気を拡大している。週末になると、満席に近い状態になる劇場も。吉浦康裕監督は「面白いと信じるものを作れば報われる世の中だと分かった」と手応えを感じている。(高柳 哲人)

 ファンの熱量に、自分が黙っているわけにはいかなかった。SNS上で「アイ-」について書き込まれた内容は、「素晴らしい映画」「絶対にオススメ」といった単なる絶賛だけではない。「何とか一人でも多くの人に見てもらいたい」といった模索や「こうすれば作品の認知が広がっていくのでは」といった提案まで様々。観客の一人一人が”宣伝担当”として活動しているようにも見える。

 「今まで、エゴサーチは絶対にしなかったんですよ。『公開したら作品は監督の手を離れて、見てくれる人のものになる』という考えだったので」という吉浦監督も、今回ばかりは考えを改めた。「『自分もそこに参加しないと!』という使命感が生まれたんです」。自身が傍観者ではいけないという気持ちになったという。

 ヒットの理由は、緻密な脚本に使用されている楽曲がピッタリはまっていること。ただ、本作は純粋な「ミュージカル映画」ではない。一般的にミュージカル映画は、「自分の心情をセリフではなく歌詞に乗せる」もの。だが、本作の場合は相手の気持ちを推測し、相手のために歌っている。

 「日本のアニメや曲というのは、誰かを応援するものが多い。それが分かった時に『なるほどな』と思って、この形にしようと思いました。元々ストーリーは出来上がっていて、それを動かすための仕組みとして歌があったという考え方。でも、ライブシーンの中で歌うように曲がストーリーと分離しているのではなく、物語の中に入り込んでいるものを作りたいと思ったんです」

 とはいえ、ミュージカルとしての”手法”も取り入れている。劇中では最初に「ユー・ニード・ア・フレンド~あなたには友達が要る~」という曲が使われているが、後半では「You’ve Got Friends~あなたには友達がいる~」という「アンサーソング」が登場する。主旋律がほぼ同じ楽曲が違う歌詞になって繰り返して使われるというのは、ミュージカルではよく見られるものだ。

 「脚本の中で曲を4曲入れようと考えた時に、最初と最後が重要だと思いました。その中で、最初は周囲がドン引きするんだけど、最後は受け入れられるという対比を分かりやすくしたかった。その答えが、この形式でした。ミュージカルに誠実に向き合いつつ、単にミュージカル好きな人だけの作品にもならないように。いいとこ取りをしたという感じですね」

 これらの曲を歌うシオンの声優を担当したのは土屋太鳳。吉浦監督が起用を決めたのは、女優としての力量というよりも「人間・土屋太鳳」とシオンとの親和性だったという。

 「シオンはぶっ飛んでいるところがあると同時にフワッとした雰囲気を持っている。そのイメージが、女優としての顔ではない、普段の土屋さんにピッタリ合っているように感じたんです。土屋さんはミュージカルにも出演していて歌えることは分かっていましたし。一方で、ファンタジーは『ムーンプリンセス』だけに負わせようと考えました」

 劇中挿入歌「フィール ザ ムーンライト~愛の歌声を聴かせて~」を、元宝塚歌劇で多くのミュージカル作品に出演している咲妃みゆに任せたのは、リアルなシオンとの対比を際立たせたいという理由があった。

 ちなみに、最後にこれだけは吉浦監督に(できればシオンの声で)聞いておきたかった。「監督、今幸せ?」

 「幸せですね。面白いと信じるものを作れば報われる世の中なんだな、ということが分かりました。この映画を『人生ベスト』と言ってくれている人もいて、その言葉をSNSを通じて見ることができる。作り手にとって、幸せな時代ですよね」

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