最高峰レベルのクラブでしのぎを削る南野拓実 現在地を探る…英国通信員・森昌利が「見た」コラム

スポーツ報知
南野拓実(ロイター)

 先週の土曜日、11月20日のアーセナル戦、そして今週水曜日24日のFCポルト戦を取材し、2試合連続で本拠地アンフィールドで躍動する南野拓実を見た。

 ご存知の通りアーセナル戦では後半31分にサブ出場し、わずか48秒でゴールを決めた。そして今年最後の欧州CLホーム戦となった試合で先発フル出場。しかもエースのサラーとマネを両脇に従えた3トップの中央でプレーをして、今季でプレミア取材が21シーズン目となる筆者を感激させた。

 確かにリバプールは4節目ですでにB組の1位通過を決めており、結果は二の次の消化試合。クロップ監督は南野以外にも19歳MFモートン、20歳DFウィリアムズ、ツィミカス、コナテ等の控え選手を先発させた。

 それでも南野にとって、サラー、マネとの3トップで挑んだこの欧州CL戦は貴重だった。消化試合とはいえ、ここでレギュラー2人と一緒にプレーして”使える”という印象を与えることが肝心だ。

 クロップ監督は、試合後「タキに関しては非常にハッピーだ」と語って、南野のパフォーマンスに合格点を与えていた。

 もちろんこれは自軍選手に対する励ましで、この試合でゴールに絡めなかった南野に対する評価は上がっていないという意見もあるだろう。

 筆者はそうは思わない。この2試合の取材で、南野は確実にリバプールというチームに”はまり出している”という印象を深めた。

 クロップ監督が就任して、リバプールは2018-19年シーズンに欧州CLを制し、翌2019ー20年シーズンにはクラブの長年の悲願だったプレミアリーグ優勝を果たして、欧州でもトップクラスの強豪クラブとなっている。

 欧州でトップクラスの強豪ということは、すなわち世界最高のレベルであるということは言うまでもない。

南野はまさにその最高峰のレベルのクラブでしのぎを削っているのだ。

 クロップ監督は、ドイツ時代には”ゲーゲン・プレス”と呼ばれ、リバプールに来てからは英語で『カウンター・プレス』と呼ばれる、非常にアグレッシブなプレス戦略を使う。これは非常に組織的なプレスであり、チームとして完成させなければならない。もちろんその前に選手にはずば抜けた走力とチームメイトを助ける献身性が当然のように要求される。きつい練習と真剣勝負を同じメンバーで何度も何度も積み重ねながら、修正に修正を重ねて、お互いを気配で感じるような組織的で効果的なプレスが実現する。リバプールの”どこから選手が湧き出てくるんだ”と思わせるようなプレスの波状攻撃はそんな血のでるような練習と実戦の積み重ねの成果だ。

 南野がリバプールに加入したのは、そんなチームとしての修練が終わり、完成された2020年1月。しかもチーム内で競う相手はそんなチームの過酷な成長過程を共にして、リバプールを強豪の地位に引き上げ、現在では世界一の3トップと呼ばれるサラー、フィルミーノ、マネの3人だった。

 現時点では、ウルバーハンプトンでプレミアでの実績を積んで昨季加入したポルトガル代表MFディエゴ・ジョッタの決定力がリバプールで本格化し、南野のライバルが4人に増えている。ところが、そんな状況でも南野がリバプールで芽を出す気配を見せ始めている。

 来年1月、もう1か月余しかないが、アフリカネイションズ・カップの開催でリバプールはサラーとマネを失うが、クロップ監督は今までのところ「補強はない」と断言し続けている。

 前述した通り、ドイツ人闘将の戦略にすぐさま対応し、サラーやマネのような活躍ができる選手が移籍市場に見当たらないからだろう。無論、エムバペの能力、そしクロップ監督がいたドルトムントにも在籍したレバンドフスキならサラーやマネの代役がこなせるかも知れない。しかしそのために一体移籍金がいくらかかるのか。そもそもパリSG、バイエルン・ミュンヘンが今冬に2人を手放すはずがない。それより、外から選手を連れてくるより、来年の1月で3年目となる南野に賭けようとしているのではないだろうか。

 筆者は、1月にエース2人が欠けるリバプールのチーム事情、補強が現実的でないこと、そこにクロップ監督の控え選手にかける期待が組み合わさり、先週のアーセナル戦、そして今週の欧州CL戦と続いた南野の起用に現れたと考える。

 アーセナル戦では速い流れの攻めに遅れることなく、最前線に抜け出した南野が見事なゴールを決めた。試合直後の会見で、クロップ監督は南野のゴールを「チーム全体が喜んでいる」と語ったが、それはプレミア戦で南野が使える目処が立ったことに”指導陣が喜んだ”ということではないだろうか。欧州CL戦では、90分フル出場し、後半途中からは右サイドでの守備対応もチェックされた。日本代表MFが加入したての頃は、途中出場ばかりということもあったが、試合に入れず、味方の速くて豊富な運動量にもついていけず、孤立したり、前線のポジションの選手とかぶって機能していない場面も目立った。ところが先週、今週2試合では、南野がしっかり、欧州最強の座を争うリバプールのカウンター・プレス戦法のピースとしてはまっている印象を強めた。

 今季、南野が出場した試合で、クロップ監督は、南野がトレーニング場でいかに素晴らしいか、必ず言及する。

試合に使われても使われなくても、南野は黙々とリバプールの厳しい練習に耐え、確実に強く、速くなり、運動量も増やし、また周囲の選手の特徴、動きも把握して、真紅のユニフォームに染まるように、今では赤いリバプールにしっかり染まっているのだ。

 もちろんレギュラーの座を勝ち取るには”はまる”だけでは十分ではない。現在の3人、いや、ジョッタを含めた4人に比肩する成績、もしくはそれ以上の活躍が不可欠だ。リバプールのレギュラーという夢のようなポジションに、我らが日本代表選手が現実的に、しかも限りなく近づいていることは間違いないのである。

 最近の日本では、英国メディアの1試合1試合で一喜一憂する記事や評価を取り上げ、南野の今冬の去就を騒ぐ傾向もある。しかし南野はリバプールに留まると断言する。と同時に、この2年間というもの、英国ではコロナ禍で完全なロックダウンとなり、一時は家族、友人と完全に遮断された環境に置かれながらも、ここまではい上がって来た26歳日本人アタッカーに敬服したい。

 来年1月のエース2人の空白期に南野拓実が爆発することを、プレミアで日本人選手を見続けている1人として心から祈るばかりである。(英国通信員・森 昌利)

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